PCT2017スルーハイクの記録~試練のWashington編 その2~

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こんにちは。からあげです。

 

PCTのまとめ記事もようやく終わりを迎える最終一個前の今回の記事。こんなに長くは掛かるとは思いもしなかった。当初は年内に終わらせるつもりだったのだが、他にいろいろやることもあったし、やる気がイマイチ起きなかったりして、帰国して半年以上も経ってしまった。

予定ではすでに今シーズンは活動を始めていたのだが、活動資金を大きく減らした今年は活動を自粛せざるを得なくなった。無念だが仕方ない。

無理して活動を続けて活動資金がなくなってしまうと、それこそ無期限に活動を停止して金策に走らればならなくなってしまうだろう。

会社を辞めて自由になったところなのに、再び会社勤めをすると自由が失われてしまう。刻一刻と残りの人生がなくなっているというのに、望まない仕事をするわけにはいかない。

 

ここでなんとしてでも踏ん張ってみせる。

Snoqualmie Pass(2390.6mile)からStevens Pass(2461.6mile)まで
9月2日(土)~9月5日(火)

 

行程 71mile

9月2日 2390.6mile~2395mile 4.4mile
9月3日 2395mile~2415mile 20mile
9月4日 2415mile~2440mile 25mile
9月5日 2440mile~2461.6mile 21.6mile
 
3時間ほど休憩をしたあと、Snoqualmie Passを通るInterstate90の下を潜ってPCTに復帰する。Interstateの交通量は非常に多く、ひっきりなしに車が行き交う音がする。歩いている道路は奥のスキー場で行き止まりとなっているためか、通行車両は疎らだった。
 
 
トレイル入口にあった山火事閉鎖の案内

PCT 2321mile地点のChinook Passから2345mile地点のUrich Cabinまでのおよそ24mileの区間で私が迂回してきた場所。びっくりさせやがって!

 
 
峠からはいきなりつづら折りの急坂が始まる。6日分の食料が重く早くもバテてきた。
大粒の汗が噴き出し、全身すぐに汗まみれとなった。
Snoqualmie Pass以北は、Seattle方面からやって来る人達で大賑わいだった。
休むにしても早めにサイトを確保しないと、休むに休めなくなる。
 
なんだか急に弱気になってきた。
 
 
17時過ぎ、2395mile付近、ちょうどつづら折りの坂を上り切ったところ、なだらかな尾根のキャンプサイトでツエルト設営。
ここを逃すと、しばらく泊まれそうなところはないと思った。翌日歩いてゆくと3mile先の湖までロクなところはなかった。
 
もうここで限界。荷物を下ろして地面にヘタリこむと、どっと疲れが出てきた。
急に重たい荷物を持ったため、これまでの慢性疲労がどっと出てきたような気がした。
とにかくこの日は無駄なことはせずに休養に努めた。
 
 
6時起床、この日は朝から晴れ、夜は冷えず朝から生温い空気が漂っている。少しでもバックパックの荷物を減らすため、サイトで朝食を食べてから出発する。
昨日のうちに坂を上り切ったおかげで、朝からは山腹を横切り尾根伝いに伸びる楽なルートを歩いていた。
 
ところが、歩き始めから体が重たく変な汗が吹き出てくる。
 
 
 
雲と煙で霞むMt.Rainier
 
 
空模様同様に私の体調はパッとしない。
 
 
 
切り立った岩の間を抜けてゆく。
 
 
なかなかいい景色なのだが、山火事の煙で白く霞んでいるためイマイチ。
それよりも体がキツくて景色を楽しむ余裕が全くない。これほど荷物を重たく感じたのはSierra前半以来。まだあの時は寒かったため、それほど汗はかかなかった。
 
今日は全身に纏わりつくような暑さで、すでに全身汗まみれとなっている。
 
 
3mileを1時間半掛けてようやく本日最初の水場Ridge Lakeにやって来た。ここで水をがぶ飲みする。
 
 
 
 
大したアップダウンはないにも関わらず、全くペースは上がらず。2405mile付近の池の畔で昼食にして食後にしばらく昼寝した。
 
2406mile過ぎからの急な下り坂でようやく息を吹き返す。
 
 
Spectacle Lake
 
うむ、名前の通り、なかなか見ごたえのある湖だな。
 
 
この日も山火事の煙を見た。凄い勢いで燃えていて空に煙を吐き出し続けている。尾根の向こう側で起きていたため、PCTは辛うじて閉鎖されていなかった。
 
 
AS OF 8/22/17

THIS TRAIL IS CLOSED DUE TO JOLLY MT. FIRE FROM HERE TO LAKE CLE ELUM.
PCT REMAINS OPEN

 
2017年8月22日現在
このトレイルはジョリー山の火事のため、ここからLAKE CLE ELUMまで閉鎖されています。
PCTは開放されています。
 
 
快調だった谷底のフラットな道から、山に取り付きつづら折りの上りが始まると、一気にペースダウン。
 
19時過ぎ、ちょうどトレイル脇にフラットなスペースを見つけたためここでストップすることにした。地図で見る限り、この先尾根を上り切るまでキャンプできそうな場所はなかった。幸運にして見つけた地図にはないサイトで一晩ゆっくり過ごした。
近くの山火事の煙が谷底に立ち込めていて、一晩中煙のきな臭さを感じながら眠った。
 
 
昨日、上り坂の途中で休んだため、本日朝から続きが始まる。3日目になってようやくバックパックの荷物が軽くなってきた。出発直後から無理をすると1日に影響するため、控えめに休み休み上ってゆく。
 
 
坂を上りきったところ、2418mile付近の小さな池の辺りで朝食をとる。
昨晩泊まったハイカーが数組見られた。
 
 
この日も山火事の影響で、煙で霞んで景色はよく見えなかった。日差しがささない割に、風がないため、非常に暑く感じた。
 
 
Waptus Lakeを見下ろす。僅かに見えるのみ。山火事の煙で視界が悪いなか歩くのは非常に堪えた。ご褒美の景色が見られないと元気がでない。どこまでも霞んだ風景が続いていた。
 
OregonからWashingtonまで、山火事の煙を見ない日はほとんどなかった。2017年は異常事態の年だった。
 
 
川で洗濯と食事をするため、河原に下りる。靴をサンダルに履き替えて川に入ると浮腫んだ足が冷やされて非常に気持ちいい。
 
 
飛び石でCreekを渡る。飛び石の場合、足を載せた途端に動くことがあるため気を抜けない。
 
 
 
雨に削られた深い谷、2440mile付近の水場で休憩。
ここは雪解け時は大変危険な場所となるだろう。雪解け水が急斜面を一気に流れ下って激流となる。
 
 
19時過ぎ、2440mile過ぎのDeception Passでツエルト設営。フラットで快適だった。
峠から南に下りてHyas Lake方面に向かうトレイルは山火事により閉鎖されていた。
 
 
Snoqualmie Passを出て5日目、夜明け前の5時に起床しサイトで食事をして5時45分出発した。今日はStevens Passまでで、20mile以上もの道のりが残っている。のんびりしていたら今日中に着けるか怪しい。このセクションは重たい荷物のため、予想以上に距離が伸びなかった。食料の余裕はあるが、次のStehekinまでの分が含まれているため、無駄に消費することはできない。食べ過ぎてしまったらヒッチハイクして町に行かねばならなくなる。北に上がるにつれてヒッチハイクは厳しさを増していたので、できればヒッチハイクなしでStevens Passを通過したかった。
せっかく重たい7日分の食料を持ってきたのに、ヒッチハイクでタイムロスをしては意味がなくなってしまう。
 
そこで今日中に着けるようにと朝早い時間に出発したのだった。できればレストランが閉まる前に下山したかった。
 
 
 
本日も山火事の煙で視界不要となっていた。天気は晴れているのか、曇なのかはよく分からない。途中で景色は諦めて、レストランでの食事のことだけを考えながら歩いた。
 
途中、すれ違ったカップルのハイカーから私の汚い身なりを見て笑われた。
その後、デブの男2人組のハイカーたちが着ていたTシャツ。お揃いの赤いTシャツに「PIZA」という白い文字がプリントされていた。PIZAの文字は大きく歪み、Tシャツがめくれて腹がベロンと出た状態だった。これには笑った。サービス精神旺盛な二人組みだった。
 
 
ちょうど12時前、樹林帯の中を歩いている時、念願のBlack Bearと遭遇する。
手前で立ち止まっていたハイカーがいたのでなんだろうと思っていると、木に上ったクマがこちらの様子を窺っていた。
クマは酷く怯えて震えながら木にしがみついている状態で、私が笛を吹きながら近づいてゆくとさら怯えて激しく興奮し始めた。
このクマは体が小さくて子クマに見えた。付近で母クマが様子を窺っているかもしれないと思った私は無理をせずに引き返すことにした。

立ち止まっていたハイカーのところまでゆき、静かにしてじっと待機すること20分、不意にドサッと何かが落ちる音がした。クマの姿が見えなくなったので、どうやら木から飛び降りて逃げたようだった。念のため、あと数分待ってから出発しようと思っていると、一緒に待っていたハイカーが歩き始めたので、私は彼の後に続いて歩いていった。
 
 
その後、何事もなく無事通過して歩いていると、トレイル脇で休んでいた見知らぬ女性ハイカーから謝られた。その時、彼女は何やら申し訳なさそうに話していたのだが、内容を全く理解できなかった。なぜ?この子は謝るのだろう?後になって(1,2時間後)ようやくその意味を理解できた。
 
トレイル上で彼女とバッタリ遭ったクマは、ビックリして木に登ってしまい、彼女だけはなんとか通過できたものの、後続のハイカーが足止めを食らっていたのだった。そんな時に私が差し掛かったらしい。
私は彼女のおかげでクマを見ることができたので、逆にお礼を言わなければならなかった。相手の言葉の意味を瞬時に理解できれば、気の利いた言葉を掛けてあげられたのにと思うと残念だ。
まあ少なくとも、「No Problem!」くらいは笑顔で言えたことだろう。
脈絡のないことを突然言われると、相手の言葉を理解するのに非常に時間が掛かってしまう。
 
 
アメリカに半年滞在中、英語が喋れなくてもなんとかなった。絶対必要だと言うことはない。今はスマホがあるため、最低限の意思疎通はなんとかなる。ただ、より深いコミュニケーションをとる時に不便に思うことがある。自分の言いたいことを言えず、相手が何を言っているのか分からず、非常にもどかしい思いをした。仲良くなれそうな人間にも出会っていたのだが、コミュニケーションを取れないため、距離を縮めることはできなかった。英語は絶対必要ではないけれど、旅をより楽しむためには必要だと感じたのだった。
 
 
15時前、Stevens Pass目前のスキー場までやってきた。この尾根を越えれば、あとは峠に向かって下りるだけだ。レストランは平日午後4時までの営業のため、急げばまだ間に合うかもしれない。そう思うと自然と走り始めていた。つい最近まで食料の重さでバテていたというのに、レストランで食事ができると思うと急に元気が湧いてきたのだった。
 
 
Stevens Pass周辺も山火事の煙で霞んでいた。
景色なんてどうでも良かった。ただレストランの営業時間内に下りたい一心で走って下りていった。
 

Stevens Pass(2461.6mile)On Trail

峠にあるこじんまりとしたスキー場。夏期はMTBのコースとして開放されている。ロッヂには売店とレストランあり。予め食料をロッヂ宛に送っておく。(ただし、UPS or FedExのみ)

ハイカーボックス・AC電源・レジスター・ウォータークーラーあり。Wi-Fiなし、AT&T圏内、荷物受け取り可。

 
15時30分ころ、Stevens Passスキー場のロッヂに到着。バックパックを置いて急いで中に入ると、ようすがなんだか変。なんと売店とレストランの営業は終了していた!せっかく走って下りてきたというのに無駄になった。日本でも営業終了前でも客が少ないと店じまいしてしまうことがあるが、アメリカでは時間前の終了がかなり多い。
がっくりと項垂れてそこら辺に座り込んだ。
 
 
私は食料を送っていないため、ここで食料の補給はできない。あとはハイカーボックスの食料を漁るしかない。ガックリと肩を落としながらハイカーボックスを漁る。
すると箱の中身は目を疑うほどの良質な食べ物が入れられていた。
 
Stevens Passでの荷物の受付はUPS or FedExのみ、Cascade Locksの隣町のHood RiverならUPSで発送できたが、20mileもヒッチハイクが必要だったため、自分で食料を持って歩くことにした。
Cascade Locksの前でUPSが送れる場所はSistersだが、そんなに早くからStevens Passでの補給のことなど考えていなかった。私はCascade Locks到着してから、はじめて補給計画を練ったのだった。もう時は遅かった。私に残された道は、持って歩くかヒッチハイクして買い出しにゆくかの二択だった。
 
 
山を駆け下りて無駄にエネルギーを消費してしまった私はフラフラだった。頼みの綱のレストランでの食事はできなくなってピンチに陥った。体を回復させるには何か食べるしかないのだが、手持ちの食料に手を付ける訳にはいかない。
 
ハイカーボックスはピンチの時に救ってくれる。Warner Springsで新品同様のトレランシューズを手に入れた時同様、この食料も非常にありがたかった。
これらの充実した食料が無ければ、私は遥か遠い町までヒッチハイクする必要があった。
 
私は入れてくれたハイカーたちに感謝しながら、チョコレートやパイ、CLIF BARをモリモリ食べた。
 
 
ロッジ内にはウォータークーラーあり。大きなペットボトルでもラクラク汲めるようになっている。またここで感謝する。
 
 
充電コーナー
 
モバイルバッテリーやスマホを充電できるようになっていた。有り難いサービス。
 
 
ロッヂ前で休憩していると、女性ハイカーがマルチャンを作り始めた。なんとなく眺めていると、彼女が使用していたストーブは私と同じSOTOのウインドマスターだった。
私は感激してすぐに感想を聞いてみると、「自動点火装置があって便利だわね。」と答えた。「いや、そこじゃないだろう!」と即座に突っ込みたかったが、思っていることを英語に変換できないため我慢するしかなかった。彼女は風と寒冷地での強さは当然で、あえて言わなかったのだろう。
 
 
お菓子を食べると、少しずつ回復していった。ここまで1日25mile計算で計画を練っていたが、食料の重さに耐え切れずに距離が全然伸びず。もう少し余裕を持たせることにした。空腹で一時はどうなるかと思ったが、充実したハイカーボックスの食料に救われて、次へ進むことができたのだった。
7日分食料に自分の限界を感じる
7日分の食料を背負ってSnoqualmie Passからの急な上りを歩いている時、自分の限界を感じました。いや、これまでも感じることはありました。今回は体力のない自分を認めざるを得ませんでした。今後の活動方針が定まった時でした。
忍び寄る山火事
一難去ってまた一難。あちこちから火の手が上がりTrailが閉鎖されていました。PCTが閉鎖される前に先を急がねばなりません。季節的な時間の余裕はあるのに、山火事は休む暇さえ与えてくれません。そんな厳しいハイク中、念願のBlack Bearと遭遇しました。

 

Stevens Pass(2461.6mile)からStehekin(2569.4mile)まで
9月5日(火)~9月9日(土)

 

行程 107.8mile

9月5日 2461.6mile~2463mile 1.4mile
9月6日 2463mile~2489mile 26mile
9月7日 2489mile~2515mile 26mile
9月8日 2515mile~2542mile 27mile
9月9日 2542mile~2569.4mile 27.4mile
 
 
18時前、スキー場ロッヂを出発、横断歩道を歩いてHwy2を渡る。下りてきたばかりの時は交通量はそこそこあったが、夕方になると車の通行はほとんど途絶えてしまった。この状態だと早い時間に下りてこないと、ヒッチハイクで町に向うのは厳しいだろう。
 
 
トレイルに復帰後、1時間ほど歩いて水場を過ぎたあたりでツエルト設営。
 
お菓子を食べて体力は回復していたものの、1日のノルマは達成したため早々とストップすることにした。
 
 
トレイル脇のため、張り綱を引っ掛けられないように石を置いておいた。
 
 
ツエルトの中に入ると恒例の裁縫仕事を行う。
 
 
ハーフパンツの右ポケットにデジカメを入れて歩いていたら、擦れて小さな穴が空いていた。気付かずに歩いていたら、デジカメは石の上に落ちて壊れていたかもしれない。川に落とすと、これまで撮りためた画像データを全て失ってしまうところだった。忘れないうちに直してしまうことにした。
 
穴が空いた箇所はメッシュが擦れて全体的に薄くなっている。単に縫って穴を塞ぐだけではすぐにまた別の穴が空いてしまうので、あて布を当てて縫うことにした。そのあて布は不要なポケットのメッシュを切り取って作った。
 
 
切り取ったところは、しっかりと縫って閉じておく。よし、これでいい。
 
 
修理したところ。修理後もポケットにデジカメを入れていたが、穴が空いてくることはなし。
帰国するまで何ら問題はなし。
 
修理に2時間掛かる。ここ最近、何かと修理で糸を消費していたため、残量がどんどんと減っていった。普段は糸を二重にするのだが、節約のため一重で修理した。なんとかして次のStehekinまで持たさないといけない。
 
 
この日もサイトで朝食を食べてから出発する。Stevens Passからようやくバックパックが通常の重さになって歩きやすくなった。朝から生温く、Tシャツ1枚で歩き始めた。
 
 
この日も山火事に視界不良となっていた。どこまで歩いていっても白く霞んでいた。
周囲が見えないため現在地が分からなくなった。そんな時、頼りになるのはスマホアプリだった。
 
 
Good job!
 
 
10時半ころ、Lake Janusの湖畔で早めの昼飯をとる。
 
 
真新しいPCTの標識
 
トレイルの番号は作った順番に振られるのだが、PCTは切りの良い2000番となっている。
もちろん偶然ということではなく、あえてキリ番を付けたのだ。PCTはそれだけ気合を入れて作ったということだ。
 
 
苦行のような毎日のハイキングが続く。せっかくの景色だが、煙で見えないのは勿体ない。
 
 
アップダウンはあるが、荷物が軽くなったため、かなり楽になった。しかし、それほど体調は良いわけではなかった。
昨日、レストランに間に合わせようと、無理して走ったのが良くなかった。知らず知らずにうちにダメージが体に蓄積されていったように思える。疲れと違いダメージは簡単に回復しない。もう少し慎重に歩くべきだった。Canada到着直後に疲労骨折を起こしたのは、蓄積していたダメージがゴールと同時に一気に出たためだろう。
 
 
19時20分ころ、2489mile付近、Skykomish Peakの上りの途中、トレイル脇でツエルト設営した。地味なアップダウンが次第に効いてきた。とりあえずノルマの25mileは達成したので、早めに休むことにした。
Stehekinまでのおよそ100mile、4日分と少しの食料で歩き切らねばならない。スタート直後から飛ばすのは良くないが、スロー過ぎると後半厳しくなってくる。不意のトラブルにも余裕を持って対処するためにも、1日のノルマはキッチリこなしておく必要がある。
 
 
昨晩遅く、トレイル上をドタドタと何者かが歩いて来る音が聞こえた。何者かはそのまま真っ直ぐ通過して行った。ヘッドランプの明かりが見えなかったため、ハイカーではない。いったい何だったんだろうか?
 
寝ている間に直ぐ側を動物たちが通るのは珍しいことではなく、単に眠っていて気が付かないだけかもしれない。
 
 
2491mile付近、Lake Sally Annの湖畔で朝食をとる。テントを撤収していた女性ハイカーから「Congratulations!」と声を掛けられる。Canadaまで200mileを切り、何事も無ければゴールできる。徐々にではあるが、ゴール間近というのを実感するようになった。
 
 
ハックルベリーの実
 
直径1cmにも満たない小さな実。千切ってそのまま食べる。意外に美味しいが、とって食べるのが非常に面倒。面倒くさがりの私はほとんど食べなかった。
 
このハックルベリーの旨さにハマると距離を歩けなくなる。ほどほどにしておくほうが良い。採取に手間が掛かるため、かなり高値で取引されているが、素人が頑張って採っても全く割に合わないだろう。クマの大好物でもあるので、周囲を警戒しながら採った方がいい。
 
 
水場で休むハイカー達
 
水場で水を汲み、すぐ近くで休むためこのようになる。ハイカーはハイキングを続けるうち無駄なことをしなくなる。私も同様、水場で腹いっぱい水を飲んで、持ち歩く水を少しでも減らそうとする。水筒を持たない野生動物は飲み溜めができるのに、人間ができないわけがない。
 
おっさんは自然環境に適応して「飲み溜め」のスキルを手に入れた!
 
 
White pass手前
 
White PassからはNorth Cascadesの奥深くに入ってゆく。YOGIのハンドブックでは悪天候時はNorth Fork Sauk Trail方面へ逃げることを推奨している。
 
 
White Moutain中腹を横切っているところ。
 
 
Red Passからの景色
 
白い岩がゴロゴロしているせっかくの景色が良い場所が白く霞んでしまっている。ここはNorth Cascades内でも特に人気のある区間らしい。少しでも景色を楽しもうとゆっくりと歩いた。
 
 
 
PCT東側のGlacier Peakの方は険しい岩山が続いている。ところどころ大規模な崩落箇所が見られた。
 
 
Creekを埋め尽くす大量の流木。水は白く濁っている。
 
 
2510mile付近Kennedy Creekに架かる橋が壊れてしまっている。太平洋岸の西側斜面に位置するGlacier Peak周辺は豪雪地帯となっている。雪の重さで真っ二つに折れてしまったのだろう。
 
 
Creekの水量はかなり多いため、慎重に折れた橋を渡ってゆく。手すりの上を歩いて渡った。
 
 
Glacier Peak( 10,525 ft (約3,200m)) を見上げる。Glacierとは氷河のこと。上部は分厚い氷河に覆われている。
 
 
この頃、ゴール直前になってハイカーの数が急増していた。先行するハイカーが仲間のために場所取りをしてキャンプ地を確保しているようだった。私は単独で歩いていたため、遅い時間まで歩いていると、まともなキャンプ地を確保できなくなる。夕方になると、地図にはない隠れたキャンプサイトがないかと地図を見ながら歩いてゆくのだった。
 
 
19時前、2515mile付近、Fire Creekを過ぎた辺りでツエルトを設営した。Creekの対岸のキャンプサイトはすでに塞がっていて通過することになってしまった。
このあと、すぐにスイッチバックの急登が始まるため、適当なキャンプ地はココらへんしかなかった。
 
単独のハイキングだと、なかなかサイトが見つからず探すのが大変だったが、それだからこそ地図を見てあたりを付けられるようになった。PCT終盤になってハイカーの多さは異常だった。後から追いついてきたハイカーがパーティーに加わり、どんどんと人数が膨れ上がっていっているようだった。ワイワイガヤガヤ、まるで卒業式を迎える学生たちのようであった。
 
 
5時半に起きると、周囲は霧に包まれてテントはずぶ濡れとなっていた。少しでも荷物を軽くしようと、サイトで朝食をとって出発する。
 
朝一から坂が始まる。本日はNorth Cascadesも大詰め、激しいアップダウンのあるハードな区間だった。ここを乗り越えれば、予定通りにStehekinに下りられる。始めは抑え気味にして上っていった。
上ってゆくと次第に霧が晴れてきた。
 
 
 
Fire Creek Passから下りに差し掛かる。
 
 
荒涼とした岩場の斜面を下りてゆく。
 
 
 2518mile Mica Lakeに立ち寄る。山に囲まれた静かな湖だった。
 
 
湖畔で記念撮影をする。こうして毎日ハイキングしていられるのも、あと僅かだと思うと寂しくなってきた。終盤、山火事の煙で景色はパッしないため、早く歩き終えてしまいたかったのだが、残り僅かになるといつまでも歩いていたい気持ちになった。
 
いったいどっちなんだ!
 
 
急な斜面を下ってMilk Creekまでやって来た。名前のとおり白く濁っている。
ここからまた強烈な上りが始まる。地図で見ると地震計の針で描いた線のようにスイッチバックの道が続いていた。
 
 
坂の途中で霧が濃くなり、雨が降っていないのに、歩いているたけで体が濡れた。しかし、ポンチョを着るまでもない微妙な濡れ方で、着ようか非常に悩んだ。
 
 
 
Glacier Peakの北側斜面をゆく。
 
 
猛烈な勢いで高度を下げてゆく。この区間のアップダウンはただ事じゃない。
 
 
Suiattle River沿いには巨大な木が何本も生えている。見上げると首が痛くなるほど高い。50mはありそうな気がする。
 
 
巨大な木のかたまり
 
 
幹の周りは大人10人くらいで手を繋いだくらいの長さだった。もはやここまでくると、木というよりは何かの建造物に見えてくる。長年掛けて徐々に成長してここまで大きくなった。
 
 
Suiattle River
 
雪解け水で増水しているようす。Glacier Peak周辺の川はたいてい白く濁っている。
 
 
Suiattle Riverをグルっと回って、登りに差し掛かる手前の2542mile付近、Suiattle Riverのそばでツエルトを設営した。地面が砂地でペグ効きが悪いため、途中で拾った長めのペグを使ってみることにした。
 
 
真ん中と下のペグが拾いもの。一番上が私のアライテントのジュラルミンペグ。
テントサイトにペグが袋ごとまるまる落ちていたため、そのまま拾ってきた。放置しておくと、単なるゴミになる。拾ったのはいいが、手持ちのペグで十分なため、使うことはなかった。
今日は柔らかい砂地のサイトで試しに使ってみることにした。
 
 
ポールの綱を長めのペグ、ツエルト四隅の綱を青い中くらいのペグを使用した。すると私の短いペグに較べてペグ効きは良好だった。軟弱な地面用に何本か長めのペグも持っていた方が良いことが分かり勉強になったのだった。
 
 
Stevens Passを出て5日目の今日、Stehekinまで残りはおよそ27mile。始めのSuiattle Passを越えると、下り基調のSouth Fork Agnes Creek沿いを歩く。頑張れば歩けない距離ではないが、最終バスの時間に間に合うかどうかが問題だった。幸い予備の食料を持っているため、バスに間に合わなくてもバス停近くで泊まれば済むことだった。しかし、どうせ休むなら町まで下りて休みたかった。そこで頑張って歩いてみることにした。
 
 
Suiattle River沿いにあった火気使用禁止の貼り紙
 
 
Fire Ban

Aug2-Sept30

No Campfires
No Woodstoves/Twig Stoves

Portable Gas Stoves Are Permitted.

 
8月2日から9月30日までの間、キャンプファイヤー、ウッドストーブの使用禁止。
携帯用ガスストーブは許可されている。
 
 
朝方からハッキリしない天気だったが、時間とともにますます怪しくなってきた。煙で霞んでいるとは言え、これだけ暗くなってくると、今にも雨が降りそうなことが分かった。
 
 
大きな岩の上で昼食をとろうとしたところ、急に大粒の雨が降ってきた。
空模様は悪かったが、空腹に負けて食事を作ることにしたのだった。
この調子だと直ぐには止みそうもない。すでに調理を始めていたため、途中で止めて荷物を片付けるわけにもいかず。バックパックに唯一の雨具のポンチョを掛けてしまったため、私は雨に濡れるしかなかった。
 
食事を終えたころになると、急に小降りに弱まった。これなら雨が小降りになるまで、荷物を背負ってポンチョを被っていれば良かった。
パックカバーとカッパを兼ねるポンチョはこういう時に非常に困る。雨が予想できたのだから、バックパックを入れるゴミ袋を用意しておけば良かったのだが、ここまで降るとは思っていなかった。
Washingtonに入ってから雨が多くなったが、いつも小雨程度で本降りになることは少なかった。
 
 
2555mile付近から高度を下げてSouth Fork Agnes Creekまで下りてゆく。
 
 
進行方向のSouth Fork Agnes Creek方面
 
谷沿いに山火事の煙が溜まっている。
 
 
最後の難関、Creekに架かる一本橋。水量は少なく歩けば安全に渡れるのに、なぜこんなに細い倒木の上を歩こうとしたのか。
 
 
高さは2mほど。軽くはないバックパックを背負っているため、落ちたら骨折の可能性あり。
PCTも終盤にきて靴を濡らさないためだけに、リスクを払う必要があったのだろうか?
何度かトライしてみたが、渡れそうな気がしなかったため、下に下りて歩いて渡った。
バスの時間が刻々と迫っているというのに、判断ミスでタイムロスをしてしまう。
 
 
Stehekinへの最終バスは18時15分、なぜかハンドブックを読み間違えて17時30分だと勘違いしていた。そのため、残り2mileくらいから走り始めた。雨に降られて体が消耗していたにも関わらず、麓に下りられると思うと力が出てきた。
最後の橋を渡ると、前方にバス停が見えてきた。やった!ギリギリ間に合った。
 
 
橋の上から川を見下ろす。
 
 
ここがバス停。下りてきたハイカーがバスを待っている。17時半を過ぎているのに、まだバスが来ていない。聞いてみると18時15分だったことが分かった。
 
慌てて走る必要は全くなかった。先日のStevens Passもうそうだが、ゴール目前は無駄に走ってダメージを蓄積させてしまっていた。
 
 
バス停のある広場の片隅にレンジャーステーションあり。最終バスを逃した時の野宿に良さそうだった。屋根があって雨が降っても濡れることはない。
 
 
バスは少し遅れてやって来た。最終バスからは数人のハイカーが下りていった。
ここHight Bridgeから麓のリゾートStehekinまでの運賃は$8。キャッシュのみ可。(復路のみStehekinの売店でカード支払可能)事前予約なしでも乗車できる。
 
昔懐かしいボンネットバスだった。日本ではほとんど見かけることはなくなったが、アメリカではこうしたボンネットバスを今でも見かける。
 
 
バスの前面には自転車のラックが3つ取り付けられている。解体せずに載せられるのは嬉しい。最終便で空いていたため、自転車1台を中に入れていた。
 
 
Stehekinは細長いLake Chelanの中ほどの湖畔にあるリゾートで、麓の町とは陸路が繋がっていない陸の孤島のような場所となっている。そのため、ヒッチハイクはできないため、バスで下りることになる。
 

Stehekin(2569.4mile)バス11.1mile

 Lake Chelan湖畔の静かなリゾート。ゴール直前の重要拠点。リゾートの小さな売店しかないため、食料はあらかじめ郵便局留めで送っておく。
 
AT&T圏外、ハイカーボックス・Wi-Fiあり、AC電源なし、無料キャンプ場あり。
 
 
 
距離にしておよそ11mileと近いが、山道のため想像以上に時間がかかる。45分ほどバスに揺られることになる。
 
バスに乗ったハイカーのうち3人が、Stehekinのロッヂから迎えにきたと思われるおばさんに、途中のパン屋で買ったと思われる大きなパンケーキを貰っていた。それを車内で食べ始めるものだから、そばにいる私は見ないようにするだけでも大変だった。見ないようにと思うほど、自然と目がいってしまう。見なくても美味しそうな匂いが漂ってくる。
 
周囲のハイカーも私と同じようなことを思っていたようで、バスの前方を見つめ続けていたのだった。3人にとっては天国のようなひと時だったろうが、残りのハイカーにとっては地獄のようなひと時だった。彼らはStehekinで下りると、おばさんと一緒にロッヂの方に消えていった。
無料でキャンプできるのに、あえて金の掛かるロッヂに泊まる。どんだけ金持ちなんだよ!と言いたくなった。
 
 
 
19時前、Stehekin到着
 
右手が売店、左手がレストラン、前面が展望の良いウッドデッキで快適な休憩スポットになっている。お腹が空いたので、とりあえずお店に直行する。
 
 
お店でおやつと食料、ガスカートリッジ小($4.5)を購入した。
ガスカートリッジは小のみ。私が到着した時は店頭に並んでいたガスが全て売り切れていて、店員に聞いてみたら奥から出してきた。ハイカーが立て続けに購入するとすぐに売り切れてしまうおそれがあるため、必要なら真っ先に購入しておいたほうがいい。
 
ボリュームたっぷりのチップスやアイスクリームを食べて、ひとまずお腹の虫を黙らせるおっさんであった。
危険な賭け
町に下りる直前で重大な選択を迫られる場面に遭遇しました。丸太橋の上を歩くか、それとも靴を濡らして歩いて渡渉するか。一見するとなんでもないことですが、失敗すれば即ハイキング終了という恐ろしい結末が待ち受けています。
 
 
最終につづく

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