こんにちは。からあげです。
アライ スーパーライト・ツエルト1
今日はツエルトの話をしよう。
ツエルトとは登山で使う非常用のシェルターのことで、山中でビバークする時に頭から被って寒さをやり過ごす。ポールがないためテントより軽量コンパクトで携帯性に優れるが、非自立式で中は狭く防水力が劣るため、お世辞にも快適とは言えない。そんなツエルトでも多少のことに目をつぶれば、装備の大幅な軽量化を図ることができる。ウルトラライト志向の人にはオススメのシェルターだ。テントは居住性、ツエルトは携帯性を求めるもので方向性に違いがある。
ツエルトは一度使ってみると軽さに病みつきになる。
2013年10月 笠ヶ岳山荘テント場にて
小雨がぱらつく中での設営となった。防風壁に守られて一晩快適に過ごすことができた。
テントに比べて快適性が劣るツエルトだが、タープを組み合わせることで格段に快適になる。タープと組み合わせて居住性をアップしつつも、それなりの軽量化を図ることができる。
ツエルトの生地には防水コーティングがされているため、多少の雨なら防ぐことができるが、テントのフライシート並の防水力はない。そこでオプションのタープ(ツエルト用フライシート)を使うのだ!
2012年12月 乗鞍スカイラインの途中にて
この日、平湯方面から乗鞍岳を目指して乗鞍スカイラインを登っていたが、雪が深くてラッセルするのが大変で半分も行かないうちに夕暮れになってしまった。ちょうど防風壁となる橋があったので、その橋の下にツエルトを張った。結露が凄くて内側全面真っ白になった。
雪の深さに嫌気がさして翌朝引き返すことにした。
スーパーライト・ツエルト1
私のツエルトはテントメーカーの老舗、アライテントのスーパーライトツエルト1というもの。これからこのツエルトのスペックについて詳しく説明してゆこう。
製品仕様価 格 9500円(税抜き)
重 量 280g
サイズ 設営時:間口90×奥行200×高さ90cm
収納時:10×10cm
カラー イエロー
素 材 28dnリップストップナイロンPUコーティング (東レ「ファリーロ」中空糸)重量わずか280g(1~2人用)の軽量タイプのツェルトです。ザックの片隅にいれておいて強風時、雨や雪の時の休憩、やむをえないビバークの時などに使用します。もちろん別売りの「ポールセット」などを利用して軽量テントとしても使用できます。
本体にはウレタンコーティング加工を施してありますので、多少の雨でも大丈夫です。ポールとベンチレーターも干渉しません。
床は紐で合わせるスタンダードなタイプです。
*東レ「ファリーロ」とは東レが開発した中空の繊維。軽さと暖かさを兼ね備えた繊維。
アライのシンプルなツエルト。ウレタンコーティングが施されているため、多少の雨ならやり過ごすことができる。ただし、防水コーティングは通気性が悪くなるため、内部が結露してしまうのが欠点。気をつけたいのがテントのような高い防水性はないこと。非常時のビバークでは、カッパを着てから被ることになる。
ツエルト用フライシート
製品仕様価格 7400円(税抜き)
重量 350gカラー:イエロー
素材:30dnリップストップナイロンPUコーティング
付属品:張網6本スーパーライト・ツェルトとスタンダード・ツェルトのフライシートです。また最も小型のシェルターでもあり、小型タープでもあります。重量はたったの350g。畳んでしまえば手のひらに載るほどの大きさしかありませんが、広げると2×2.2mの大きさになります。
使い方はシートの代わりに地面に敷いたり、小屋掛けの屋根にしたり、雪洞の入口やくるまっても良しと、実にいろいろな使い方ができます。ある意味では究極のシェルターといっても良いでしょう。
スーパーライトツエルト1フル装備とエアライズ1との重量の比較
左からツエルト用ポールセット1(張り綱含む)、アンダーシート1、スーパーライト・ツエルト1、ツエルト用フライシート。
アンダーシート1はエアライズ1・ゴアライズ1用のものだが、スーパーライト・ツエルト1でも使用できる。
ここでは私が普段の山行で使っていたフル装備の重量を個別に秤で計測してみた。
使用した秤は、タニタのデジタル秤。(TKD-160)
参考リンクアライテント エアライズ製品説明のページ
製品名 | 実測値 | メーカー公称値 | 備考 |
スーパーライト・ツエルト1 | 262g | 280g |
収納袋付き、ロープなし |
ツエルト用フライシート |
294g | 350g | 張り綱6本付き |
アンダーシート1 |
144g | 160g | 収納袋付き |
ツエルト用ポールセット1 | 224g | 225g | 張り綱2本付き、ただし、手持ちの品は自在なし。 |
合計 |
924g | 1,015g |
エアライズ1とスーパーライト・ツエルト1の比較
エアライズ1 |
||
パーツ |
重量 | 備考 |
本体・フライシート・ポール |
1,360g | 張り綱、ペグは含めず。 |
アンダーシート1 |
160g | |
合計 |
1520g |
スーパーライト・ツエルト1 |
||
パーツ |
重量 | 備考 |
本体 |
280g | |
アンダーシート1 |
160g | |
ツエルト用フライシート |
350g | 張り綱6本付き |
ツエルト用ポールセット1 |
225g | 張り綱2本付き |
合計 |
1,015g |
*重量は全てメーカー公称値
ツエルトフル装備でも、エアライズ1との重量差は約500g。トレッキングポールを携行し、ツエルト本体のみだと、1200g以上の圧倒的な重量差となる。
ツエルトの設営の手順とポイント解説
設営する場所は広大なからあげ邸の片隅。専用のテント設営用スペース。ここで密かに新開発の道具のテストを行っている。
まずは地面の小石や枝を取り除きグランドシートを敷く。グランドシートを使用するのは、防水と底面の保護のため。
ここではまだペグは打たない。風が強い場合はペグを打って仮止めしておくか、そこら辺の石を載せておく。
グランドシートの四隅は補強されてペグループが取り付けられている。
生地は40Dナイロンタフタ、ウレタンコーティングが施されている。エアライズなどテントの底と同じ生地となっている。
ツエルトの四隅のループには2mmのロープ(中芯はダイニーマ)を取り付けた。これはツエルト基本中の基本のカスタマイズだ。ロープがあると設営のバリエーションの幅が広がる。
非常用として携帯するだけなら、このロープは必要ない。(上から被って使用)
ロープの結び方は、基本の8の字結び。簡単に結べて自然に解けることはない。
ツエルトの四隅をペグダウンする。ロープを張ってある程度テンションをかけておく。ツエルトは非自立式なので、ある程度のテンションが必要。
グランドシートのペグループにロープを通してからペグダウンする。
ペグは叩くものではなく押し込むもの。オートキャンプ用の大きなペグのことは知らない。ここでは登山用のペグの説明をする。
写真のように他のペグをT字状に当ててから腰を入れて押し込む。石で叩くとペグの頭が傷むし、地中に石があった場合は簡単に曲がってしまう。石が多い場所では、無理してペグを打たずに石で固定した方がよい。そのためにもロープを取り付けておく必要がある。
このように他のペグをT字状に当てると手が痛くならない。
最後の一本はどうするのか?そこら辺に転がっている石を当てるとよい。(叩いてはダメ)
ペグは穴に通して結んでおく。この結び方は船のビットに結ぶやり方。簡単に結べて絶対に解けずテンションの調整がしやすい。
ペグの穴に通しておけば、風に煽られてもロープが外れることはない。ペグが抜けた場合、どこかに飛んでいってしまうこともない。ペグは穴付がオススメだ。
私が普段から愛用しているのは、エアライズ用のジュラルミンペグで1本15g(実測値12g)。そこそこ軽量コンパクトでコストパフォーマンスに優れる一品だ。
ツエルトの張り綱は、それぞれ半分にして両端の金属製リングに通しておく。
張り綱はツエルト用ポールセット1の付属品で太さ3mmのナイロンロープ。
リングの通し方。このように通せば簡単で結ぶ必要がなく、外れることもない。
ポールの先端を通しやすくするためにはこの通し方がベスト。
ツエルト用のポールは、オプションのツエルト用ポールセット1を使用する。
トレッキングポールでも設営可能だが、専用ポールの方が簡単に張れる。
トレッキングポールを携行する場合はこのツエルト用ポールは必要ない。
ポールは三つ折り式で折りたたんだ状態の長さは42cm、直径11mm、ジュラルミン製。
ポール先端のようす
リングにジャストフィットするサイズとなっている。
ポールエンドのようす
中に土や石が入らないようにキャップが取り付けられている。
張り綱のペグは、四隅のペグの延長線上にあらかじめ打っておき、リングにポールの先端を挿して、片方のロープを靴で踏みながらもう片方のロープを張る。
写真は片方のポールを立ち上げたところ。ツエルトのポールはロープを2本取らないと安定しない。動かない立木に結ぶ場合は1本で良い。
リングにポールを通したところ。絶妙のフィット感で外れるようなことはない。
これがトレッキングポールでの設営ではないところだ。
ツエルトを張り終えたところ。なかなかパリッと張れたぞ!
ツエルト単体の場合は横風に弱いため、できるだけ出入り口側を風下に向けて設営する。風上に向けると開けた時に鯉のぼり状態となる。
張り綱にはプラスチック自在が付いているのだが、自在は使い勝手が悪いしロープワークの妨げになるので取り外してある。
自在は風に煽られると少しずつズレてロープが弛んでくる。ロープの調整はペグ側で行った方が良い。
ファスナーは片方のみ。反対側はなし。
軽量化とコストカットのためにファスナーは片方のみとなっている。(私の推測)
出入り口の反対側のアップ
両側の天頂部付近にベンチレーターがある。セルフビレイ用のロープを通すことができる。
風雨が強い場合は、ベンチレーターを絞ってこのように縛っておくと良い。
ロープが緩んで開いてくることはない。
ただし、中でストーブを使用する時は一酸化炭素中毒防止のためにベンチレーターを開けておく。
出入り口側のアップ。
黒色のシングルファスナーが取り付けられている。
下側がなくなっているのは、以前、太郎平小屋(薬師峠)キャンプ場で泊まった時に出入り口を開けた状態でガスストーブを使っていたところ、風に吹かれた生地がストーブに当たり溶けてしまったのだ!
生地とファスナーが溶けてしまっている。
隙間風が多少入って来る程度で使用上それほど問題なし。完全に閉まらない状態で2年ほど使っていた。
傷みがこれ以上酷くならないようにリペアシートと補修してある。
出入り口を開けたままにしたい時は安全ピンで固定している。
安全ピンのアップ。使用しない時は、天井のループに付けておくと良い。
袋にしまう時は取り外して小物入れなどにいれておく。(紛失とケガ防止のため。)
ツエルトの底は割れるようになっている。これがテントと大きく違うところ。写真ではロープを縛って閉じている。
頭から被る場合や靴を履いたまま(特にアイゼン着用している時)中に入る場合に底を割る。屋根が内側に垂れ下がってくるため、かなり狭く感じる。
少し大きいスーパーライト・ツエルト2ロングの場合は、オプションのインナーフレームを入れて居住性を高めることができる。
出入り口のようす。
下側は閉められない構造となっている。これがメリットでもありデメリットでもある。
出入り口の反対側。
こちらも下側を閉じることはできないが、持ち上げて隙間を開けて外にゴミを掃き出すことができる。ツエルト内はいつもタオルを使って掃除している。
ベンチレーターを内側からみる。
天頂部のようす
テープで補強してあって、3箇所にループが取り付けられている。
ループのアップ
リッジレストクラシックSを107cmにカットした軽量化仕様ものを中に入れた。
マットの上に寝袋を敷いた。
身長165cm痩せ型のおっさんが寝袋に入って寝たところ。
頭と足元に若干の余裕あり。
あぐらをかいて座ると、頭が天頂部に触れるほど低い。
ツエルト内でスープを最後の一滴まで飲む時は、寝転がって飲むことになる。
タープ(ツエルト用フライシート)を付ける
ツエルトを設営した状態で、さらにタープを取り付ける。袋から出してタープを広げたところ。張り綱は6本取り付けられている。
端と張り綱のようす
タープの全周と中央部に補強用のテープが取り付けられている。プラスチック自在は使用しないが、外すとどこかにいってしまうため付けたままにしてある。
中央部分の補強のようす
テープと生地が取り付けられている。
中央部分のリング
ツエルトのリングの上からそのままポールの先端に挿す。
四隅のロープを張ってから、中央のロープを張った方がやりやすい。風が強い場合は、とりあえず数カ所仮止めしておく。タープを張ってからもう一度ツエルトのロープのテンションも調整を行う。
ペグが足りなくなったため、石を使ってロープを張った。
石で固定する場合は石を動かしてロープのテンションを簡単に調整できるが、石が小さいと風に吹かれると動いてロープが弛んでしまう。
正面から見たようす
スーパーライトツエルト1の場合、両サイドにかなりの屋根付き空間ができる。
ここに汚れ物や登山靴を置いてよくといい。
真横から見たようす
横風に弱いツエルトは、タープとセットで設営すると横風にも強くなる。
スーパーライト・ツエルト1の場合はタープの下に小さな軒先ができる。
角度を変えてもう一枚。
タープによって防水性能が向上したツエルトだが、縦方向からから雨が吹き付けると、ツエルトが濡れてしまい浸水する。そのためできるだけ風を横から受けるように設営する。(立木、岩などの遮蔽物を利用する)
出入り口の反対側のようす
タープの中央のロープを強めに張るとよりテンションがかかってきれいに張れる。
ただし、引っ張りすぎると天井が低くなってしまうので注意。
低い天井がさらに低くなって居住性が悪化する。
上から見たようす。小屋の屋根の上から撮影した。三角屋根がかわいい。
ツエルトは非自立式で設営スペースをとるうえに、タープを組み合わせるとさらにスペースをとる。まさにテント場の邪魔者と化す。ロープ込みの設営スペースを計測したところ、およそ2.3×4.1mだった。人気のテント場で到着が遅いと、張るスペースがなくなってしまうだろう。
スーパーライトツエルトまとめ
ツエルトは軽量なところが一番の魅力だ。一度軽さを知ってしまうと、自立式の重たいテントには戻れなくなる。非自立式はペグ効きが命なので設営に頭を使うが、またそれが楽しかったりする。
アメリカのロングトレイルをツエルトで歩き通し、ツエルトの理解がより深まった。工夫しだいでどうにでもなると分かった。それで私はもう自立式のテントは使わないことにした。より軽くより快適に歩くために、今後もツエルトなどの軽量シェルターを使い続けることだろう。
テントが快適すぎて物足りないと考えている人には、ツエルトはオススメのシェルターだ。
コメント
からあげさん 今晩は。
私のテントはシングルウオール、欠点は前室がないことです。
からあげさんの「北海道編」のクチャロ湖のページを読んで、フライシートで広い前室ができることを知り、眼からウロコの思いでした。
早速、アライのフライシートを買いました。
私のは重量280g、ペグ10本加えても400g前後でしょうか。
それほど負担にならない重量だと思います。
「みちのく潮風トレイル」で真似させていだたきます。
春が待ち遠しいです。
ありがとうございました。
快適さをとると重量が増えるので、非常に悩ましい問題ですね。
楽しんで歩いてきてくださいね。海岸線に沿って築かれた巨大な防潮堤を見てどう感じるかはNSさん次第です。