PCTでのクマ対策~ベアキャニスターの運用報告など

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こんばんは。からあげです。

 

ここ最近、あれこれ資料やメモを読んで頭の中を整理していた。そしてようやくひとつの記事としてまとめることができた。PCTを歩き終えてからすでに2月経過している。記憶が確かなうちにまとめておきたかった。PCTでクマ対策は重要な事柄のひとつ。大まかでも一度アップしておいて、時間を見つけてコツコツ修正、書き足してゆく作戦をとることにした。まだまだ荒削りだが、完璧を目指しているといつまで経ってもアップできない。

それではこれから順に説明してゆくことにしよう。

ベアキャニスターが必要な区間

Sequoia National Park Kings Canyon(Seki) National Park(セコイア国立公園 キングス・キャニオン(セキ)国立公園)

PCT最高点Forester Passを越えてCreek沿いに下っているところ。今年は残雪が多く高山帯ではクマの痕跡はほとんど見られなかった。(6月上旬時点)

PCTではKennedy Meadows(702.2mile)からSonora Pass(1016.9mile)まで約300mileの区間(主にSequoia National ParkとKings Canyon(Seki) National Park)でベアキャニスターの使用が義務付けられている。(正確にはベアキャニスターまたはベアボックスの使用、定められた方法で吊り下げるのいずれかを用いればよい。ただし一部区間についてはベアキャニスターのみとなっている。)

*1mile(マイル)はキロメートルに換算すると1.6km。アメリカではmile表示がほとんど。

 

Lassen Volcanic National Park(ラッセン火山国立公園)

Lassen Volcanic National Park内

向こうに見えるのはLassen Peak(10,457 ft 3,187 m) 

残念なことに松くい虫の一種にやられたのか、立ち枯れの広大な森が広がっていた。しかし、クマの痕跡は随所に見られた。

さらに今シーズンの2017年からLassen Volcanic National Park内で泊まるハイカーは、ベアキャニスターの使用が義務付けられた。

Halfmile’s PCT Maps California Section N Page-9より

注意書き原文
New for 2017:Overnight backcountry users in Lassen Volcanic National Park must use a bear canister to store food from April 15-Nov30.
2017年から新設:4月15日から11月30日までの間、ラッセン火山国立公園内で宿泊を伴うバックカントリーユーザーは、食べ物を保管するためのベアキャニスターを使用しなければならない。
 

Halfmile’s PCT Maps California Section N Page-12より

Lassen Volcanic National Park 1343.8mile(Lassen NP)~1363mile(Lassen NP2)まで約20mileの区間

ベアキャニスターが必要な区間は約20mileと短いため、スルーハイカーなら余裕を持って1日で通過することが可能。ベアキャニスターを持っていないならば、ラッセン火山国立公園手前通過後、またはWarner Valley Campground(1347.8mile地点)で泊まることになる。

Warner Valley Campground付近

ベアボックスが設置されているWarner Valley Campgroundで泊まれば、ベアキャニスターは不要。
すぐ近くのDrakesbadという高級リゾートで、荷物の受け取りと食事をすることができる。(食事をすれば、プールを利用することも可能。ハイカーフレンドリーな施設。)キャンプ場で泊まってゆっくりするのもいい。

Warner Valley Campground

山奥のひっそりとしたオートキャンプ場。水道、トイレ、ゴミ箱があり、区画内にはピクニックテーブルベアボックスが設置されている。

料金は1泊16$料金箱に支払うシステム(アメリカでは普通)となっている。複数で泊まれば、かなり安く上げることができる。

 

*この記事では、PCTを北向きに歩くことを前提に(North Boundが一般的)説明しています。

 

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ベアキャニスター使用の意義

ベアキャニスタとは、クマから食料を守る丈夫な容器のこと。クマには開けられない構造となっていてハイカーとって大事な食料を守ることができる。クマの嗅覚は人間の数万倍とされていて、どんな僅かな匂いでも嗅ぎつける。チャック付きの袋に入れて密閉しただけでは、簡単に嗅ぎつけられる。ベアキャニスタは密閉できない構造で匂いが漏れる。密閉構造としても開け閉めの際に匂いが漏れるため、全く意味がないためだ。

食料をクマに奪われるとどうなるか。奪われた本人が空腹で行動不能になることの他に、クマが人間と食料を関連付けて学習すると、性悪のクマとなって後からやって来るハイカーが危険になる。性悪クマは、人間の付近を徘徊して食料を奪うチャンスを伺うようになる。あるクマは人間が寝静まった深夜、テントにやって来て付近をうろつくことになるだろう。クマは本来非常に臆病な動物で人間には決して近寄らないのだが、人間の怖さより食料欲しさが勝ってしまうと寄ってくるようになる。そんな時に人間とばったり遭遇すると悲劇が生まれる。驚いたクマが反射的に防衛しようと人間を襲ってしまうことがある。クマと人間では勝負にはならない。軽く引っかかれただけで重傷を負う。人間に危害を加えたクマの末路は死が待っているのみ。ハンターに射殺されてしまうだろう。

他のハイカーが危険にならないために、そして可哀想なクマを生み出さないためにも、ベアキャニスターを必ず使用する。ベアキャニスターの重さ1.1kgを嫌うような軟弱者ではスルーハイクは達成できないだろう。スルーハイカーは責任と誇りを一緒に携帯すべきだ。

 

ちなみに、Sierra前半では全くパークレンジャーの姿は見なかったが、Sierra後半(7月下旬)ではTuolume Meadows近くとDonohue Passで3回レンジャーに会い、PCTのパーミットとベアキャニスターの提示を求められた。バックパックの外に出さなくても、口を開けてベアキャニスターのフタを見せたらOKとしてくれた。

*パークレンジャーとは、国立公園(National Park)内をパトロールしている自然保安官。

 

Black Bear

ここで言うクマとはアメリカンブラックベア(American Black Bear)のことで、体長は1.4m(成体)、体重は110kg(成体)とされている。日本でいうと北海道にのみ生息するヒグマよりも、主に本州北部に数多く生息するツキノワグマに近い動物のようだ。

01 Schwarzbär

画像 wikimedia Commonsより

参考リンクWikipedia American black bear

クマは南Californiaの一部の乾燥地帯を除いて、PCTのほぼ全域で生息している。ベアキャニスターの使用が義務付けられていない場所でも頻繁にクマの痕跡を見つけた。

スタート地点Campoから20mileも離れていないトレイル上で見つけたクマの糞。PCTは馬に乗って通ることも可能なため、始めは馬糞かと思っていた。しかし、めったに見かけない馬があちこちに糞を落とすはずがなかった。

Tehachapiの町で補給を済ませてトレイルに復帰したところ

帰りに車に乗せてくれた地元に住む夫婦の話によると、ゴミを漁りにやって来るクマが民家の周辺でたびたび目撃されているとのことであった。聞いた時はにわかには信じられなかったのだが、ところどころに落ちている大きな糞を見ていると、クマ以外には考えられず信じるようになった。驚くべきことに木がほとんど生えていない砂漠のような場所でもクマが生息しているようだった。

このため、ベアキャニスターをスタート地点のCampoからゴールのCanadaまで使い続けるハイカーもいる。Sierraを過ぎた北Californiaでベアキャニスターを使用しているハイカーをたびたび見かけた。

Washington Stevens Pass(2461.6mile地点)手前でBlack Bearと遭遇した。他のハイカーに驚いたクマがトレイル脇の木に登って下りて来なかったため、私は手前で待機を余儀なくされた。逃げ場のない木に登るのは、経験が少ない若グマの証。私がハンターだったら、即撃たれておしまい。

一度笛を吹いて突破しようとしたが、クマが笛の音に敏感に反応して興奮状態となったため、危険と判断し引き返した。遠目で見たところ、体が小さく子グマであるように感じた。子グマの近くには母グマが気配を消して潜んでいるかもしれなかったため、クマが木から下りて何処かに行くまで気長に待つことになった。(30~40分ほど他のハイカーとともに息を潜めて座っていた。)

 

ベアボックス

ベアボックスは主にSierra山中のキャンプサイトに設置されている、大きくて丈夫なスチール製の食料保管庫。特にクマが多く生息しているエリアを重点的に設置されている。フタは金具などでロックしてあってクマには開けられない構造になっている。

ただし、スルーハイクする時期はまだ雪に埋もれていて使えない箇所が多いため、ベアボックス頼みで歩くことはできない。

Sierraのキャンプサイトにあったベアボックス

スチール製のかなり大きな箱。このキャンプサイトは日当たりがよくて使用可能となっていた。他のサイトは雪に埋もれていて確認できなかった。

ベアボックスを開けたところ。大容量でバックパック丸ごと幾つも入る大きさ。中に使用上の注意事項が書かれた紙が入っていた。

フタには金具2個でロックされていてクマが開けられないようになっている。

 

木から吊り下げる方法だが、私はこの方法をよく知らない。他のハイカーでやっている人は見かけなかった。場所によっては吊り下げる木がないところもある。PCTで有効な方法ではないだろう。Yosemiteでは木から吊るす方法は認められていない。

 

ベアキャニスターの入手

ベアキャニスタは現地で調達も可能(Kennedy Meadows General Sotre、Lone PineやBishopのアウトドアショップでも売っていた)だが、現地でバタバタするのは嫌なので、出発の2月前にアメリカのAmazon.comで購入しておいた。レンタルもあるようだが、借りたり返したりするのに手間がかかるし、それほど高いものではないので購入した方がよい。(私は70$で購入した。ただし、送料は別。)

BearVault ベアキャニスター BV-500
PCTをスルーハイクするためにBearVault社製ベアキャニスターBV-500をアメリカAmazonで購入しました。 軽量で道具いらずで開けられる仕組みで気に入りました。 製品の詳細をおっさん流に丁寧に説明しました。

 

ベアキャニスターの発送

ベアキャニスターと一緒に厚手の長袖シャツやネックウォーマーなどを入れて、Kennedy Meadows General Store宛に送っておいた。

住所はハイカーのバイブル、YOGI’S PCT Handbookに記載されている。

YOGI'S PACIFIC CREST TRAIL HANDBOOKの購入
こんにちは。からあげです。 小屋に戻ってから早2周間以上過ぎてしまった。 最近、何をやっているのかと言えば、パソコン作業と薪割りばかり。 本当に飽きてきた。 ようやく先日、注文していた参考資料が届いたので、そろそろ実家の方...

 

発送は日本郵便 国際小包のエコノミー(SAL便)料金 3850円 

10日から2週間ほどで到着するとのことだった。

 

ベアキャニスターの受け取り

6月1日にKennedy Meadowsに到着。奥のキャンプサイトでツエルトを設営してから早速General Storeに行って送っておいた荷物を受け取った。

Kennedy Meadows General Store

Sierra入りするハイカーたちの重要拠点。シーズン中は大勢のハイカーたちで賑わっている。

General Store店内

シーズン中 定休日なし 午前9時~午後5時まで

カウンターで名前を言ってパスポートを提示する。すると奥の倉庫から荷物を持ってきてくれる。荷物の受取料は1個5$。クレジットカードでも支払い可能。

食料とトレランシューズ、ベアキャニスターの3点を受け取った。
ベアキャニスターは箱に入れておいたお陰で無傷で受け取ることができた。

 

ベアキャニスターの容量

 

BV-500サイズ

高さ 32cm
直径 22cm
重さ 1157g(本体905g、フタ252g)

 

BearVault社のBV-500というモデルが、軽量リーズナブルでハイカー定番のベアキャニスターとなっている。私が見た限り、9割以上のハイカーがBV-500だった。中にはwildideas社製のThe Weekenderという300$弱もするカーボンファイバー製の高級ベアキャニスターをもっているハイカーもいた。

詳細は入手した時に書いた記事を読んで頂きたい。

BearVault ベアキャニスター BV-500
PCTをスルーハイクするためにBearVault社製ベアキャニスターBV-500をアメリカAmazonで購入しました。 軽量で道具いらずで開けられる仕組みで気に入りました。 製品の詳細をおっさん流に丁寧に説明しました。

 

Kennedy Meadowsのキャンプサイトでベアキャニスターに食料を詰めているところ。

この時は嵩張るマルチャン(袋入りインスタントラーメン)ばかりで、しかも初めてだったので、中に入れるのにかなり苦労した。マルチャンを割りながら強引に押し込んだ。袋入りツナは自由に形を変えられるため、かなり入れやすい部類だった。

Northern Kennedy Meadows General Storeにて。クリフバーやチョコレート、マルチャン、マッシュポテトなど多数購入した。

 

Northern Kennedy Meadows(1016.9mile地点)へは、Sierra区間をMammoth Lakesからスキップして南向きで歩いて辿り着いた。本来はベアキャニスターはここまでで良いのだが、残りのMammoth Lakesまでを歩くために必要だった。

食料は必要な日数分に加えて予備に1~2日分持つことにしていた。どう頑張ってもベアキャニスターに入るのは5日分までで、入らない分は食料袋に入れてからバックパックの中に入れていた。他のハイカーに聞いても、せいぜい5日分が限界と言っていた。

私がSierra入りしたのは6月の上旬、Vermilion Valley Resort(略してVVR 878.7mile地点)が営業しているのか分からない状態、さらにその先のTolumne Meadows General Store(942.5mile地点)は道路が冬季通行止めのままで営業の見通しは全く立っていない状態だった。そのため、より多くの食料を持つ必要があり、ベアキャニスターの中に全ての食料を入れることは不可能だった。

BV-500の半分のサイズのBV-450を持っているハイカーをごく僅かだが見かけた。話を聞いてみるとギリギリ5日分入ると言っていた。何を食べているのか知らないが、相当無理があるように思えた。どう見ても入りきるとは思えなかった。

ベアキャニスターの中に入れるのは食料だけではない。水やお茶以外の飲み物、日焼け止めクリーム、歯磨き粉、クッカーを入れなければならない。これらの匂いもクマを惹きつける。だが、食料でさえ入りきらないのに、これらの物を入れる余裕は全くなかった。食料が減ってきて空きができたら、入る分だけ入れていた。

厳格に決まりを守ろうとすると、ベアキャニスターを2個用意しなければならないが、2個入るような大きなバックパックを背負って歩くのは現実的ではなかった。現にベアキャニスターを2個持っているハイカーは全くいなかった。

Sierraではクマのほかに、雪の急斜面の登下降や増水したCreekの渡渉が危険となる。大荷物を背負っていては安全に通過することは並大抵ではできない。そのため、ハイカーは1つのベアキャニスターで創意工夫してクマの危険を低減させるように努力していた。

 

ベアキャニスターの携帯

ベアキャニスターは円筒形の硬い容器のため、バックパックに入れるのには苦労した。試行錯誤してようやくバックパックの中央に入れるのがベストだと分かった。

Kennedy Meadows出発時、バックパックの一番上に横にして入れていた。バックパックの幅が少し狭いため強引に入れることになった。かなり生地に負担がかかっているように見えたので別の方法をとることにした。(他の方法を試してみたが、しっくりこず結局、しばらくはこの方法をとることになった。)

バックパックの上に載せてストラップで締めた。ベアキャニスターの表面はツルツルと滑りやすく、ストラップ1本では簡単にすっぽ抜けてしまう。試しに背負ってそこら辺を歩いてみたら、すぐにすっぽ抜けて他のハイカーに笑われた。

角度を変えてもう一枚。少しでもグリップが良くなるようにと、イボイボをバックパックの方に向けたが、気休め程度しかならなかった。

ハイカーボックスを覗くとテーピングテープがあったので、グリップ力が少しでも良くなるようにとベアキャニスターに巻いてみた。

タイベックシートを挟んでからストラップを締めてみた。かなり安定したが、これでもすっぽ抜けるおそれがあった。渡渉中にすっぽ抜けたら流されて食料を全て失ってしまう。外にむき出しで積み付けるのは危険と判断し、一番始めの横向きにバックパックの中に入れることにした。

バックパックの外に積み付けることは、渡渉時に流されてしまうおそれがあるため非常に危険。Wildernessの奥深くで食料全てを失うことは死に等しい。必ずバックパックの中に入れる。
 

横向きだと途中でズレてくるので、しばらくしてから縦向きに入れるようにしてみた。バックパックの内側に巻いたリッジレストが押さえてくれるが、ストラップがセンターに来るため、どちらか片方に寄せることになりバランスがかなり悪くなった。この方法でかなりの距離を歩いていた。

食料をいっぱいに詰め込んだベアキャニスターは相当重くて、バックパックの一番上に入れると、歩行中にバランスを崩しやすく危険だった。日本の登山では、重たいものはできるだけバックパックの上に方に入れた方が楽に背負える、ということが常識だった。そのため、私も重たいベアキャニスターは一番上に入れる方が良いと思っていた。しかし、この方法は間違っていた。

超軽量のレイパックはフレームレスで剛性がなく、重たいベアキャニスターを保持できずにすぐにズレてきて、大きくバランスが崩すことになる。

トップヘビーのバックパックに嫌気がさして、試しにベアキャニスターをバックパックの中央に入れてみたところ、非常にバランスが良くなって劇的に歩きやすくなった。

バックパックの一番下に寝袋と着替えなど、真ん中にベアキャニスター、すき間に適当な荷物を詰めて、一番上に防寒着のフリースを載せてフタをしてストラップできっちり締める。これだと転んだとしても簡単に荷崩れは起きない。自作のバックパックには、軽量化のためにウエストストラップを付けていなかった。そのため、バックパックの重心がトップヘビーだと、ちょっとバランスを崩しただけでバックパックが動いた。このバックパックの動きが歩行の妨げとなることがしばしばあった。

このように試行錯誤しながら、再びSierraに入る前に、ようやくベアキャニスター携帯方法が確立したのだった。

 

ベアキャニスターの運用

ベアキャニスターは人が寝ている間にテントにクマを寄せ付けないようにするため、寝る時はテントから距離を離して置いておく。キャンプ地では食事は行わないのが基本。食事をする場所がなかったり、食事をしている場合じゃない時もあるので、その時はテントから離れた場所で食事を済ませて、そのままベアキャニスターはテントから離して置いておく。

ベアキャニスターに入りきらない食料がある時は、できるだけ匂いが漏れないようにビニール袋に入れてからバックパックに入れて体のすぐ脇に置いておいた。

私は怖がりなので、テントから50m以上離れた場所に置いておいた。目印になるものがないところだと、どこに置いたか分からなくなるおそれがあるため、トレイル脇に置いておいた。他のハイカーも同じ機種BV-500を使っているので、自分のものと分かるように細工をしておいた方がいい。私の場合はテーピングテープを巻いて目印としていた。こうして巻いておけば、怪我をした時に使えて一石二鳥となる。

ベアキャニスターがクマに弄られたことは一度もなかった。

 

驚くことに他のハイカーはベアキャニスターをテントのすぐ脇に置いていたり、テントの中に入れている人もいて(トレイル脇でキャンプしているハイカーがいるのだが、どこにもベアキャニスターが見当たらなかったことが度々あり、テント内に保管していると思われた。)ビックリした。ほとんどのハイカーは私ほど距離を離していない。Tolumne Meadowsで会った日本好きのハイカーアダム(おばあさんが日本人のクォーター)は、アメリカ人はベアキャニスターをテントの中に入れることもあるし、すぐ脇に置いておくことが多いと言っていた。日本語が話せるハイカーで理由を聞くチャンスだったのだが、聞いたら悪いような気がして聞かず仕舞いだった。(今思えば、非常に勿体ないことをした。)

私の推測では、ベアキャニスターを離して置かなくても危険なのは本人だけで他人には危害が及ばないからだと思う。手元に置いておくほうが小腹が空いた時に食べ物をすぐに取り出せて便利だし、目の届く範囲にあった方が安心できる。アメリカは日本ほど治安が良くなくて、荷物は絶えず身につけておく必要があり、その習慣がトレイル上でも現れていると思われる。

 

ベアキャニスターの便利な使い方

ベアキャニスターの意外な使い道。密閉できるわけではないので、完全防水というわけにはいかないが、ジップロックに入れて中に入れておけば、水に濡れてしまうことはない。水量の多いCreekを渡渉する時は、スマホをこのようにして万が一の渡渉の失敗に備えていた。

私が渡渉に失敗して死にそうになったReds Meadows近くのMinarret Creekを渡る時、このようにしていて、スマホの水濡れを防ぐことができた。

クマに弄られても壊れないほど丈夫なため、耐衝撃のケースとしても使える。中に余裕がある時は、スナック菓子やマルチャンを潰すことなく持ち運ぶことが可能となる。

他の使い道の定番のものとしては、椅子として使用する。座りやすい場所がない場合、地面にベアキャニスターを置いてその上に座る。いちいち出すのも手間なため、キャンプ地で椅子として使うことが多い。椅子にする場合は、フタをキッチリ締めておかないとネジ山を傷めるおそれがある。

手洗い用桶として利用することもある。California北部 Etnaの市立公園にて。

1泊5$のリーズナブルなキャンプ場となっている。洗濯物はまとめてするより、こまめにしていた方が時間とお金を節約できる。写真は汗と埃にまみれた下着類を洗っているところ。水洗いでも十分汚れが落ちる。ちょうど手頃な大きさで使いやすい。

フタをストーブ台として使用しているところ。キャニスター一体型のストーブは安定性が乏しいため、不整地ではこのようにすると安定して調理がしやすくなる。

Mammoth Lakesのキャンプ場

多くのキャンパーが訪れるキャンプ場はクマの他にもリスやネズミなどの小動物が人間の食料を狙っている。ゴミをそこら辺に置いておくと漁られて散乱してしまうため、ベアキャニスターをゴミ箱として使用した。ゴミが出るたびにいちいち捨てに行くのは面倒くさい。トレイル上でもゴミは、できるだけベアキャニスターの中に入れていた。

ベアキャニスターは防水・耐衝撃ケース、椅子、手洗い桶、ゴミ箱、ストーブ台としても使うことができる。

 

ベアキャニスターを日本へ返送する

 

Mammoth Lakesまで歩いてスキップしたSierra区間が終わると、ベアキャニスターは不要となったため、他の不要な荷物と一緒に日本に送ることにした。

薄手の長袖シャツ、JMTマップ、余白のページがなくなったメモ帳、Idylwildで応急的に購入して不要となったクッカーとストーブ、浄水器のSawyer Miniなど。

ベアキャニスターの中に荷物を入れてフタをしてテープを貼っておいた。

このようにしっかりと貼っておいた。ただ、中身は税関でチェックされるため、テープは切られていた。

 

ベアキャニスターの傷み具合と使用した感想

 

Mammoth Lakesから愛知の実家の方に送っておいたベアキャニスターは驚くべきことに発送後、一週間ほどで到着していた。箱に入れずにそのまま送ったため、宛名シールなどがベタベタに貼られていたが、壊れているところはどこにもなかった。

Priority Mail International 料金約70$

シールを剥がしシンナーを使ってきれいに糊を取り除いた。全体的に擦り傷があるものの外観上全く傷みはなし。透明であるため、中に何を入れているのか分かりやすくていい。ただし、日向に置くと高温になって中の食べ物が傷みやすくなるので注意。

フタのようす

フタに付けられたポッチでフタが開かないようにロックできる。

ポッチのアップ。

繰り返し開けたり閉めたりしたため、多少ポッチが削れている。しかし、使用上問題はなし。

フタを外したところ。

フタはストーブ台に便利だった。内側を上に向けて一時的な小物入れとしても使用した。小物をそこら辺に置くと、失くすおそれがあった。

フタのポッチを内側から撮影する。ポッチの部分が肉薄となっていて、押したら凹む仕組みとなっている。朝夕など気温の低い時はプラスティックが硬くなり、フタを開けるのがかなり大変だったこともある。寒い日に手袋なしで歩いていると手がかじかんで、ポッチを押す操作がしにくかったこともあった。

それでも、道具なしでフタを開けられるのは非常に便利だった。

ネジ山のようす

傷みはなし。多くもなく少なくもなく。適度に回して開け閉めできた。

本体のネジ山のようす

傷みはなし。ポッチはフタより丈夫なためか、ほとんど削れていなかった。

本体の中のようす

匂いはなし。外側が擦り傷だらけに対し、内側はかなりきれいだった。

底のようす

擦り傷だらけだが、割れや凹みなどの傷みはなし。数回腰の高さから落としたことがあるが、丈夫なため全く傷まなかった。

底のアップのようす

これくらいの擦り傷は全く問題ない。むしろ味があっていい。

本体側面のようす

擦れて多少曇っているものの強度は全く問題なし。イボイボにも傷みはなし。

参考情報

ちなみにこのベアキャニスターは、Echo Lake付近のCreek(川)で見つけた。フタは大丈夫だったのだが、本体が2箇所大きく割れていた。中身は割れた箇所から流れ出たのか空っぽだった。増水時の渡渉で流されたものと思われる。持っていた人は無事だったのか、非常に気になった。外観からは少なくとも今年のもの(2017年)ではないと思われた。

真横からみると、傷のようすがよく分かる。口と底の部分が割れている。凄まじい破壊力だ。人間が流されたらひとたまりもないだろう。

 

ベアキャニスター以外のクマ対策用品

 

緊急時とクマ対策のために、サコッシュに笛を取り付けていた。

プラスチック製の平べったい笛。
クマの気配を感じたときと1度遭遇したときに吹いたくらい。

Kennedy Meadows General Storeのハイカーボックスにあったベアスプレー。なんと新品のまま投入されていた。

 

ベアスプレーには、カプサイシンという激辛唐辛子成分が入っていて、クマに吹きかけて撃退するスプレー。突進してくるクマを撃退するほどの効果があるらしいのだが、重たい、風下では使えない、1回限り、至近距離で噴射する、いつでも使用できるように携帯しなければならないなど、いろいろな制約があるため、PCTハイカーで持っている人はほとんどいない。

私も始めからベアスプレーを携帯することは全く考えなかった。一昨年の北海道登山で初めて携帯してみただけ。確かに持っていると安心できるのだが、自分が効果的に使用できるか常に疑問だった。それに航空機には持ち込めない(預け荷物もダメ)し、高価であることもあって、携帯しようと考えたことは一度もなかった。JMT区間(Sierra後半の7月下旬)でパーティーのだれか1名だけが持っているのを数回見ただけだった。

 

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私のPCTクマ対策用品は、笛とベアキャニスターのみ。

日本で定番となっている熊よけの鈴はアメリカでは全く見なかった。誰一人として(日本人ハイカーでさえ)鈴を付けている人はいなかった。私は普段めったに熊よけの鈴は付けない。北海道や東北の白神山地で付けたくらいだった。鈴の音がクマに効果があるのかは疑問視する見解もある。鈴の音をさせていると、好奇心旺盛な若クマが逆に寄ってくることがあると、どこかの本で読んだ記憶がある。鈴の音は周囲の音が分からなくなるし、うるさいので私は嫌いだ。

なぜアメリカでは熊よけの鈴を付けないのか考えてみた。日本の山のように草木で視界がきかなくなる場所は少なく、開放的で見通しがよい場所が多いためだと思われる。クマは非常に臆病でめったに人前に姿を現さない。そんなクマだが、ばったり出会い頭に遭遇してしまうと、臆病な性質から身を守るために反射的に攻撃してくることがある。危険なバッタリ遭遇さえしなければ、それほど危険ではない。見通しの良いSierra山中ではバッタリ遭遇のおそれが少ないために、熊よけの鈴をつける習慣がないと思われる。

以上は私の推測で本当かどうか分からない。Tolumne Meadowsで会ったフレンドリーで日本語の話せるアダムに聞いておくべきだった。

 

スルーハイカーの戦術

 

PCTという長大なロングトレイルをスルーハイクするためには、無駄を省き装備の軽量化をして歩く必要がある。重たくて嵩張るベアキャニスターはハイカーにはとても不評で、必要最低限の区間だけ持ち歩くことが多い。

私はSierraを途中のMammoth Lakes(906.6mile)からOregonのAshland(1716.2mile地点)までスキップし、AshlandからMammoth Lakesへ歩くことにした。Sierraの残雪を避けるために行ったもので、この手法はフリップフロップ(Flip Flop)と呼ばれている。変則的な歩き方をしたため、ベアキャニスターが不要な北Californiaも持ち歩くことになった。

 

当初の予定では、Kennedy MeadowsからSonora Passまで使用し、Sonora Pass最寄りのNorhern Kennedy Meadows Resortから日本へ送り返すことにしていた。

2017年からLassen Volcanic National Park(ラッセン火山国立公園)内で、ベアキャニスターの使用が義務付けられたが、20mileと距離が短いため一日で通過することが可能だった。Sonora Passでベアキャニスターを手放しても何ら問題はない。

しかし、ベアキャニスターが不要なところでも、クマは数多く生息しているため、いくつか注意することがあった。

寝る時、食料はバックパックに入れて手元に置いておくこと。
キャンプサイトでは食べ物を食べない。

以上、自分で決めた2つのルールをだいたい守っていた。そのため、夜間クマが寄って来るようなことは一度もなかった。

 

スルーハイカーの戦術まとめ

ベアキャニスターはKennedy MeadowsからSonora Passの区間だけ持つ。Lassen Volcanic National Parkでは泊まらず一日で通過する。
 

まとめ

ベアキャニスターは日本では馴染みが薄い存在だが、アメリカでは当たり前の装備品の一つとなっている。クマが住めないほど自然破壊が進んだ場所では、歩いても全く面白くない。クマの家にお邪魔するというような気持ちで、ベアキャニスターを持った方がいい。実際に遭ってみると、それほど危険ではなく、可愛らしく見える。

邪魔で嵩張るものだが、いろいろ使い方を考えるのが面白かった。あれだけ邪魔だったベアキャニスターも日本に送ってしまうと、なんだか寂しくなった。ハードケースのため嵩張るが、荷物を整理するには便利だった。

今後もベアキャニスターを活用して安全に山に入ってゆきたい。

 

 
おわり
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