超軽量の自作バックパックをPCTで使った感想と消耗・劣化具合【前編】

こんにちは。からあげです。

はじめに

アメリカ西海岸メキシコからカナダまで延びる全長2600mile(約4,200km)の長大なトレイル。その名をパシフィック・クレスト・トレイル(略してPCT)と呼ぶ。そのほかのコンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)とアパラチアン・トレイル(AT)とPCTを合わせてアメリカ三大トレイルと呼び多くのハイカーを魅了し続けている。

毎年春になると世界各地から多くのハイカーが訪れてPCTのスルーハイクにチャレンジする。スルーハイクとは春から秋までの1シーズンのうちに全行程を踏破すること。

長大なトレイルを冬が来るまでに歩き通すには相当の体力と技術が必要だった。かつては一部の超人しかなし得なかったスルーハイクだが、トレイルの整備とサポート体制が整い現在では一般人でも達成可能となった。そんな身近になったスルーハイクだが、やはり体に掛かる負荷は相当なもの。装備の軽量化がカギとなる。従来型の重たい装備ではハイキングの過酷さに耐えきれず、途中で行き倒れになる可能性さえもある。

私はスルーハイクを成功させるために、お金を度外視して装備の軽量化に励んだ。通常バックパックは軽量化よりも背負心地や耐久性が重視されるが、従来型のフレームありのバックパックだとかなり重たい。そこで軽量なバックパックを装備に加えることにした。

今でこそ既製品の軽量なバックパックが売っているが、お金を出して単に買うだけではつまらない。かと言ってミシンも使えない人間が一から作るのはハードルが高すぎる。それでレイジャーディンのバックパックキットを購入して自作することにしたのだった!

 

時が経つのを忘れてバックパック作りに励んだ。寝る間を惜しんで英語の説明書を解読し、慣れないミシンを操った。そして6日間かけてようやく完成したのだった。決して親切とは言えない英文の説明書だったが、ミシンの使い方を忘れていた私でさえもなんとか完成させることができた。

昔、クラスの女子に「裁縫ができる男は気持ち悪い。」と言わしめた男。それが若き日のおっさんだ!人間やる気になれば、たいていのことはできる。ミシンは繰り返し操作しているうちに体が覚えてくる。

こんな楽しい思いをしたのは小屋を建てた時以来か。夢中になってバックパックを作った。縫い目が歪んでいたり、ストラップの取り付け角度がおかしかったりもするが、単に見た目が悪いだけで耐久性は全く問題なかった。そんなことはPCTを歩き切ったという事実が証明してくれる。

 

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乗り物に乗る際にバックパックを傷めない工夫

超軽量のバックパックは耐久性を犠牲にしてあえて薄い生地を使用して軽量化している。そのため、取り扱いには細心の注意が必要だ。作った本人なら耐久性のなさを十分知っているし、手間暇掛けて作り愛着があるため雑に扱うことはしない。

問題は飛行機やバスに乗る時。大きな荷物のバックパックは係員に預けることになる。限られた短時間で多くの荷物を運ばなければならないため、そうそう丁寧に扱っていられない。

なるべく傷まないように自分で工夫してみる。ある程度やっていてもダメだったら、その時は諦めもつく。何もやらずにバックパックが傷んでしまったら後悔する。

そこで厚手のブルーシート(#3000)でバックパックの保護袋を作ってみた。バックパック自作でミシンの取り扱いにある程度慣れたので、やけに簡単に感じた。

厚手のブルーシートは丈夫で引っ張ったくらいでは破れない。摩擦にも強い。そのうえよく目立って遠くからでも自分の荷物だと分かる。こんなダサいバックを持つ人間なんて滅多にいない。

東京へ向かう高速バスに乗るときから保護袋を使用していた。せっかく丹精込めて自作したバックパックが出発前に壊れてしまっては勿体ない。

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羽田空港で荷物を預けた時のようす

念のため保護袋に入れてからビニール紐で縛っておいた。袋が大き目で中でバックパックが踊る感じがしたからだ。

ロサンゼルス(Los Angeles)空港で荷物を受け取る時は、遠目でも見た瞬間すぐに自分の荷物だと分かった。もちろん保護袋のお陰でバックパックはノーダメージ。

保護袋は荷物入れにも使える。スタート前にサンディエゴ(San Diego)のスーパーでで買い物かごいっぱいの食料を購入した。

保護袋に全て入れてもまだまだ余裕があった。アメリカのスーパーで貰える買い物袋は、たいていペラペラで破れやすい。丈夫なブルーシートだと破れる心配はまったくない。

この保護袋は途中で邪魔になりバウンスボックスに入れて処分した。

バウンスボックスとは、ハイカーたちのリサイクルボックス。不要になった道具や食料を入れるハオ。ハイカーの立ち寄り先に設置されている。
 

アメリカの長距離バス グレイハウンド(Greyhound)

飛行機のほかに気をつけたいのが、長距離バスに乗る時。貧乏なバックパッカーの味方グレイハウンドだ。サービスは悪いが運賃だけは安い。

乗車する際は大きなバックパックは下の荷物スペースに預けることになる。盗難防止のため荷物の出し入れはすべて荷物係が行う。荷物を預ける際は、サイドポケットに重要な荷物を入れないこと。

荷物の出し入れの時、ずり落ちてなくなってしまうことがある。ペットボトルに重要アイテムの浄水器を直付けしている時は、かならず外してバックパックの中に入れておく。私はタイベックシート、サンダル、ペットボトルなどなくなってもよいものだけ外のポケットに入れておいた。

荷物を受け取る時は、そばに待機して荷物係が出すのを待つ。自分で勝手に出そうとすると怒られる。

グレイハウンドは運賃が安いが、荷物の扱いがかなり雑。片方のショルダーストラップだけを持って放り投げていたのを見た時は、荷物係に思わず文句を言いたくなった。シエラをスキップする時は、すでにブルーシートで作った保護袋は手放していたため、バックパックむき出しの状態で預けなければならなかった。

 

PCTハイキング中のようす

ハイカーにとってバックパックは自分の分身のように感じる相棒的なギアだ。大事な装備品や水食料などをたくさん運んでくれて(ただし体力はこちら持ち。)、いつでもどこでも自分と一緒に旅をする。自作しただけに余計に愛着が湧き大事に大事に使っていた。

カリフォルニア南部の乾燥地帯にて

木陰で休んでいるところ。休憩中はできるだけ直射日光を避けて劣化を抑えた。

シエラ(Sierra)の麓の小さな町インディペンデンス(Independence)にて

中学生とその教師が乗ったキャンピングカーに乗せて貰って麓まで下りてきたところ。自作の杖に付けたバンダナがバカウケしていたようす。私達日本人がおかしな関西弁を喋る外国人が面白いように、アメリカ人達には東洋系の挙動不審の変なおっさんはかなり面白かったようだ。

車を下りるとバックパックをそっと地面に置いて、見えなくなるまでバンダナを振っていた。

エトナ(Etna 1597.2mile地点)に下りるためヒッチハイクしているところ。交通量は皆無で全く人気がない。

こんな時もバックパックはそばでおっさんを見守ってくれた。長期戦を覚悟したが、30分もしないうちに町から上がってきた車がUターンして乗せてくれた。どこかに監視カメラが付いているんじゃないかと思ったほどだった。

1000mileを超えたころ、あちこち傷んできたので、通販で補修シールを購入して修理した。シエラ前半で食料をたくさん詰め込んだ無理が出てきたようだった。

Amazon.comで5$くらいだった。粘着力・耐久性は申し分なかった。
現地で買うと高いし実店舗では滅多に売っていないので、日本から持っていった方がいい。
小さなパッチタイプよりハサミでカットできるシート状の方が使い勝手がいい。
ここぞという修理には本物、どうでもいいやつには100均の補修シールと使い分けると経済的。

 

エクステンションカラーの縫い目が強く引っ張られて傷んできたため、補修シールを貼っておいた。後に縁を糸で縫って補強した。
(始めベアキャニスターを横向きに無理やり入れていたため、その時のダメージが出てきたものと思われる。)

サコッシュのストラップと干渉してショルダーストラップが傷んできたところ。

本物の補修シールは勿体なかったので、日本から持って行った100均の補修シールを貼って糸で縫っておいた。

7月11日 チェスター(Chester 1328.8mile地点)の教会裏でのキャンプにて。
ゆっくり丁寧に時間を掛けてバックパックの修理をおこなった。

休憩の合間にもバックパックを修理する。傷んだ箇所を見つけたらその場ですぐに修理する。
そうすると最小限のダメージで済む。

ストラップの解れ

ストラップが擦れるなどの僅かな問題でも、長距離を歩くうちに積もり積もってはっきり表に現れる。
そのまま放置しておくとダメージが深刻化して、大修理が必要となってしまう。

7月22日早朝 サウス レーク タホー(South Lake Tahoe)の図書館の軒下で野宿して朝を迎えた。
ヒッチハイクしてトレイルに戻にのはまだ早いので、バックパックの修理を行うことにした。

ショルダーストラップの付け根が傷んできたため、糸で縫って補強しようとした。しかし生地が薄くて強度が十分でないため、上から補修シールを貼ってから糸で縫うことにした。

超軽量の生地は薄いため補強のためのあて布が必要だった。
あて布には簡単に貼れる補修シールがよい。(ただし、縫っていると針に粘着物質が付く。)

修理が終わったところ。超軽量なバックパックを活かすもダメにするのもハイカー次第。

連日のハードなハイキングで疲れたおっさん。すぐ脇にはバックパックがいて元気づけてくれた。
バックパックと一緒にゆっくり休むと不思議と歩く気力体力が湧いてきた。

見通しの良い平原をゆく。次の町、シスターズ(Sisters)に向かっているところ。背後から雷雲に追われているところで、頑張って足早に歩いている。そんな時もバックパックは一緒。

8月22日 カスケードロックス(Cascade Locks 2144.4mile地点)にて

PCTの旅も終盤となるオレゴン州最後の町Cascade Locksで丈夫なミシン糸を手に入れた。Amazon.comで注文して協力的なレストランに送っておいたのだった。これまでマンモスレイクス(Mammoth Lakes)の薬局で手に入れたミシン糸は細くて頼りなかった。

とにかく馬鹿みたいに丈夫な糸で、思い切り引っ張っても切れずに指に食い込んで痛い思いをする。
日本に持ち帰って今でも現役で活躍中。物持ちが異常なほど良いおっさん。

エクステンションからの穴に補修シールを当てて外れないように糸で縫う。

ストラップの付け根も補修シールで補強しておいた。

サコッシュの透明ビニールケースを付け替えたところ。

修理を終えたバックパック

裏側も写す。

Cascade Locksで万全な修理を行い、ゴールまで残り500mile。
さあ、ゴールに向かってレッツゴー!!

ワシントン州の山火事迂回中

孤独なハイキングを続ける私の唯一の友はバックパックだった。ここぞとばかり山火事区間をスキップするハイカーが多いなか、殺風景な道路を一人黙々と歩いていた。ちょうどピクニックテーブルを見つけたので一休み。

9月15日ゴールのカナダ国境に到着した。

旅を共にしたバックパック、サコッシュ、自作杖と一緒に記念撮影をした。
長い長いPCT。この超軽量のバックパックにどれだけ助けられたか分からない。

ありがとうレイパック!

 

途中で見かけたレイパック

アメリカ人ハイカーは、レイジャーディンのことを当然知っていると思っていたが、実際はそうではなかった。むしろ日本人の私の方が知っていたくらいだった。

若者はほとんど知らなかった。「これ、レイジャーディンのバックパックだよ!」と言っても鳩が豆鉄砲食らったようにキョトンとしていた。(単に私の発音が悪かっただけかもしれない。)ただレイパックを知らない若者でも、軽量ギアには興味があるようで、入手方法や作り方をあれこれ聞かれた。

ただ私と同世代のおっさんには非常に受けが良く、「おい、それレイジャーディンだろ?」みたいに話しかけられ質問攻めにされたことがある。しかし、実際に持っていた人と現地で会ったのは2人だけ。

1人目はシエラ山中のフォレスター峠(Forester Pass)で会った50代くらいのおじさんだった。最後の急な坂を登り終えて峠に着くと、一人のおじさんが縫い物をしていた。なんだろうと見るとレイパックの修理を行っていた。嬉しくなって話しかけたが、あまり反応が良くなかったのでそっとしておいた。

2人目はPCT終盤、ワシントン州北部のリゾート ステヘキン( Stehekin 2569.4mile地点)のお店の前で会った。

私が椅子に座って休んでいると、「日本人ですか?」と声を掛けられた。その人はなんと日本とアメリカの2重の国籍を持つ女性で、日本で生まれ育ち高校生の時にアメリカに渡って現在に至るそうな。その彼女が背負っていたのがレイパックだった。なんという偶然だろうか?

バックパックはベージュを基調とした落ち着いた雰囲気に仕上がっていた。サイドポケットには、ハイカー定番のスマートウォーター(Smart Water1L)のボトルが刺さっていた。

バックパックの仕様は、私と同じウエストストラップとチェストストラップなしだが、オプションのポケットが付けられていた。彼女によると、出し入れしにくく使い心地はあまりよくないとのこと。確かにバックパックの中央内側にあるため、荷物に押されて出し入れしにくい気がする。

破れたメッシュのところに、同系色のパッチを当てて修理してあった。
なんとも味があって興味深い。

セルフビルドの小屋と同様に自作のバックパックもその人の性格がモロに出る。

背中側のようす

ショルダーストラップにはゴムを付けてペットボトルを留めてあるだけのウルトラライトな自作ボトルホルダーあり。

彼女のバックパックはボトム周辺とメッシュが傷んでいたが、本体上部とストラップにはほとんどダメージは見られなかった。身長が低いために底を岩角にぶつけやすいことが原因と思われた。他人のレイパックを見ると、自分とは違うやり方作ってあったりして参考になる。

細かいところは自己流で縫ったとのこと、これも私と同じだった。

これはレイパックではない既製品のウルトラライトなバックパック。シエラ山中で会ったフレンドリーなハイカーが持っていた。見せてとお願いすると「おう、どうだ!コレかっこいいだろ~!」みたいな軽いノリで見せてくれた。

値段は400$くらいだったか?軽量で丈夫なキューベンファイバーのような生地でできていた。センターに大きなメッシュポケットが付いていて、その下にマット固定用のストラップが付いていた。バックパックの容量は30L程度で容量が小さいため、外付けでいろいろギアな取り付けていた。

背中のようす

枝に引っ掛けて穴が空いたところには、補修シールを貼ってあった。補修シールはトレッキングポールのシャフトにぐるぐる巻きにして携帯していた。

バックパック以外にも軽量のチタンアイゼンやピックの付いたピッケル代わりに使えるブラックダイヤモンドのポールも持っていた。

今回はここまで。後編につづく
 

コメント

  1. 白山室堂御前荘 より:

    クラスの女子に「裁縫ができる男は気持ち悪い。」と言わしめた男。

    >これこれ!これが隊長クオリティですよ!

    手作りバックパックでカナダまで、よく持ちこたえました。
    一夜を共にした、キャロルさんも感動した!

    次の探検もからあげオリジナル装備の紹介と選定記事を頼みます。

    • karaage より:

      その女子は相当悔しかったのだと思います。普段、まるでダメな男に負けたのだから。

      はい、あまり役立たないような記事をどんどん量産してゆきます。

  2. nao より:

    私もレイのバックパックを作ろうと思っていた所で非常に参考になります。
    渡渉のトピックと言い、隊長のブログは経験を詳しくフィードバックしてくれるので大変参考になります。
    隊長の「読者がそれを行う際、困らないように」という親切心が垣間見え、隊長のお人柄が伺えます。
    肝は動く部分の補強ですね、作る際は多少重くなっても入念に補強しようと思いました。
    私にとってはめちゃめちゃ参考になってます。

    余談ですが、私も

    >昔、クラスの女子に「裁縫ができる男は気持ち悪い。」と言わしめた男。それが若き日のおっさんだ!

    これに笑ってしまいました。
    私も最近MYOGを嗜んでいるのですが、女性に裁縫の話をすると「すごいですね~」って肯定的に受け止められるんで、多分隊長の仰る通り悔しかったんだろうと思います。
    気持ち悪いのはどっちだって話ですが、隊長の持ちネタとして昇華されていますし、結果オーライといったところでしょうか?
    次の記事も楽しみにしています。

    • karaage より:

      言われた当時は悔しかった私でしたが、今では私の持ちネタの1つになりました。
      たったこれだけか!は隊員の中で話題になっているようです。

      その女子、ピアノも弾けて結構頭の良い女の子でした。プライドが傷つけれて、相当悔しかったんでしょう。
      なんでも笑いにするのはブロガーになってからですかね。

      はい、ご期待ください。

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