実家の物置小屋に引きこもりながら、日々コツコツと作業を続けている自称探検家のおっさん。冬本番になり寒さが厳しくなってきたが、耐寒能力の維持、さらなる向上を目指するために、高気密高断熱の家ではなく、敢えて隙間風が吹き抜ける極寒の物置小屋で生活する。
ふぅ~、本物の探検家になるのも大変だぁ!
こんばんは。からあげです。
寒い時は温かいうどんを食べるに限る!昨日は酒粕たっぷりの粕汁をモリモリ食べて体の芯から温まった。
それはそうと、先日読者からペグに直接結ぶロープワークを教えて欲しいとの要望を頂いたので、写真を撮って記事にすることにした。一部ピントの甘い写真があるが、カメラが言うことを聞かなかったので勘弁してほしい。
当サイトはおっさんの気の赴くままに、日々の活動をダラダラと書き綴っているブログなのだが、たまには読者の要望に応えて記事を書きたくなる。読者の喜びはおっさんの喜びでもある。まあ、嘘くさい前置きはこのくらいにして早速説明するとしよう。
傷まないペグの打ち方
まず始めに傷まないペグの打ち方を説明しよう。先日のアライのツエルトの記事で説明したが、検索でも出てくるようにもう一度書いておくことにした。
登山用テントのペグは、軽量化のために丈夫なチタンやジュラルミンで作られている。
しかしいくら丈夫なペグでも、転がっている石で叩いて打っていると、たいてい直ぐに傷めてしまう。
昔は私も見よう見まねで石で叩いていた。するとわずか2泊3日の山行程度で必ずペグの1本2本は曲げていた。
上の写真の一番左にあるピンペグは絶対に石で叩いてはならない。
上が長年使用しているアライテントのジュラルミンペグ。
下がヘリテイジのエスパースに付属していたもの。
エスパースのペグは工業製品としては美しいのだが、穴が小さくペグ自体が細くて弱そうなため、ほとんど使ったことがない。
ペグは修理しやすい大雑把な作りのものがいい。
アライのペグを曲げてはバイスに挟んで修正するを繰り返すうちに傷だらけになった。これでも見た目が悪いだけで、使用上何ら問題はなし。
軽くて直しやすくてコストパフォーマンスも良いおすすめのペグ。
石で叩いていたころの名残。頭が少し潰れている。
あのまま叩き続けていたら、すでに使用不能となっていただろう。V字型のペグがいつの間にかバイスに挟んで修理するうちにL字型になってしまった。
傷める度にハンマーで叩いたり、バイスに挟んで元に戻したりしていた。それでも当時はまだ短期山行ですぐに戻ってくるから何の影響もなかった。ところが長期車中泊で登山を繰り返し行うようになると、支障が出るようになった。出先ではペグの修理は難しい。ハンマーで叩いて直そうとすると余計に状態が酷くなる。車にバイスを設置するわけにはいかないし。
なんとかならないものか?と考え続けた。
いいアイデアはずいぶん経ってから閃いたように記憶している。ネットで検索して答えを見つけたのではなく、自分で考えに考えて答えを導き出した。ちょうど何かの作業をしていてアイデアが浮かんだのかもしれない。もう自分の中では当たり前になりすぎていて、いつからというのも思い出せない。
ペグは叩くものではなく押し付けるもの
と分かってからは、ペグを傷めることがほとんどなくなった。山行を繰り返してもほとんどペグが傷まないので、予備のペグをたくさん持つ必要がない。
PCTではこの方法でペグを打ち続けて一度も傷めることはなかった。軽量化が求められる過酷な長距離のハイキングでは、耐久性を落としてでも軽量化する必要あり。そのため道具の取り扱いは慎重に行う必要がある。
ペグを打つ時は他のペグをT字状になるように横向きに当てる。
そして腰を入れて一気に地面に押し込む。他のペグを頭に当てているため、全く手が痛くならない。
たいていの地面ならこの方法でペグを打つことができる。
地面に押し込む方法でも根本までしっかり入る。
地中に石があってペグ効きが悪いところや、そもそも石や岩だらけでペグが入らないところは石にロープを縛って固定する。
そのためにはロープで石を縛ることができるようにテントのループやショックコードにロープを取り付けておく必要がある。多少重量が増えるものの設営のバリエーション増える。これはツエルト・テント泊には必須のカスタマイズだ!
自在不要のペグに直接縛るロープワーク
テントの張り綱にはロープの長さを調整するための自在(自在にロープの長さを調整できるために付けられた名前か?)が取り付けられている。確かに自在があるとロープワーク不要となって便利なのだが、風が強いとバタバタと煽られて次第にズレてきてロープが緩んでくる。風が強いだけなら外に出てロープを張り直せばいいだけだが、雨も降っている時にいちいち外に出たくない。
自在を使わない自在結びというのもあるが、細いロープだとやりにくいし、そもそも結び方を知らない!
自在がズレないようにするためにはペグ側で結んでおく。
それだけでいい。自在はロープワークの妨げにもなるし、風に煽られると緩んでくるので、いつの間にかペグ側で結ぶようになった。石で固定する時は自在は邪魔なだけだった。
自在の使用方法、結び方
いちおう自在のロープの通し方を説明しておく。
上はエスパースソロのプラスチック自在。下は同じくエスパースソロの張り綱。直径2mm中芯がダイニーマで反射材が付いている。
ロープの端は解れてこないように瞬間接着剤で加工してある。ライターで炙ると大きな団子状になるし、使っているうちに解れてきたり中芯のダイニーマが飛び出てきたりしてロクなことがない。
このロープはPCTで使用したもの。全く解れてこなくて快適に使用することができた。おっさんおすすめのロープ加工だ。
通し方は簡単。3つの穴に順に通してゆくのみ。下から上に通したら、次は上から下に通してゆく。
こんな感じで通す。
ロープの末端は一重に巻いてコブを作るだけでも良いのだが、ガッチリと結び目が締まると解きにくい。ロープワークは解く時のことも考える必要あり。
ロープワークの究極は、素早く結べて解けにくいが外しやすくする。矛盾するようだが日頃の訓練で身につけることができるスキル。ああ私もいつかそんなスキルを身につけたい!
エンドは2重に巻いて大きなコブを作る。輪っかに2回通して大きなコブにすると扱いやすくなる。
締めるとこんな感じになる。
自在の準備の完了
これで自在にロープを通すことができた。ループの中にペグの頭を引っ掛けて締める。
ペグに自在付きのロープを取り付けたところ。
自在のようす
ロープのエンドがきっちり仕事をしている。
ペグのようす
切り欠きにロープがハマるようにすると、ロープが外れにくくなる。
ただし、この方法だと風の強い日にはロープが外れてしまうことがある。
張り綱のないテントは耐風性が落ちる。張り綱を適度に均等に張ってこそ、本来の耐風性能が発揮できる。緩みやすい自在では心もとない。
直接ペグに縛る方法の詳しい解説
それではお待ちかね。ペグに直接ロープを縛る方法を説明しよう。
まずはロープが張った状態でペグとロープが直角になるようにペグを打つ。
もちろん押し付ける方法で行う。
アライのジュラルミンペグの頭のようす
大きな切り欠きと大きな穴が空いている。この穴は3mmのロープも楽々通すことができる。穴の直径は約6mm。
ペグの穴にロープを通して張ったところ。
ペグの穴のアップ。
ロープを張ってテンションをかけたまま、ロープの先を張ったロープの下を通す。
そしてロープの端を折り返して上側に持ってきて引っ張る。
ロープを軽く引っ張りながらペグに巻きつける。
そして再び張ったロープの下からロープの先を通す。
引張りながらロープを折り返す。
そしてもう1回。3回張ったロープの下を通して折り返す。
最後にロープの下を通して輪っかを作る。
輪っかの中にロープの端を入れて引っ張る。
このように輪っかを作って締める結び方をハーフヒッチという。最も基本のロープワーク。
ハーフヒッチを2回するとさらに丈夫な結び目となる。これをツーハーフヒッチという。
締めるとこのようになる。
3回折り返して最後にロープが解けないように輪っかに通しておく。これで完成!
ポイントはテンションをかけながら下から上に。
この結び方は船のビットにロープを縛る時によく用いられるもので、何トンという大きな力がかかっても外れることがない。ロープが切れるかビットの付け根からもげるかのどちらか。
滑りやすいロープの場合は、折返しの回数を増やせばより丈夫な結びとなる。
ロープを張った方向からペグを見たようす。
ロープの中心がペグの中心にくるように調整しておくとより丈夫になる。
横から見たようす。
決して緩むことのないこのロープワーク。穴に通しているためペグが飛ばされても見失うこともない。大きな力が加わった場合はペグが抜けるだけ。
テントやツエルトは張り綱をこの方法で立木に結べば万全だが、絶対に緩まない結び方のため、風が強すぎると生地が破ける恐れがある。風が強まった場合は撤収を考えないといけない。
続いてチタンのピンペグ
これはトレイル上で拾ったもの。頭が目立つようにオレンジ色に塗装されていたので気がついた。地金むき出しの銀色だったら、気付かずに通り過ぎていたことだろう。
放っておいてもゴミになるだけだったので、拾っていってハイカーボックスに入れようと思った。入れる前にものは試しにと使ってみると、オレンジ頭が目立ってペグを見失いにくくていい感じだった。天からの授けものだと思って貰うことにした。
このピンペグは非常に繊細で、頭を石で叩いたら直ぐに曲がってしまいそうな代物。
地面に打つ時は、手のひらに頭を押し付けてしっかり握って押し込む。
このピンペグ見かけによらずかなりペグ効きがいい。土中に石があっても何度かやり直しているうちに石のすき間に入れることができる。一度使うと病みつきになるピンペグ。軽いのでペグ袋に2,3本入れておいても苦にならない。私はピンペグ抜きではテントを張れない(張りたくない)ダメな人間になってしまった。
ピンペグの頭はロープが外れやすいため、ロープを一周巻いてから折り返してゆく。
ロープワークに厳格な決まりはない。臨機応変に柔軟に行う。たくさんの種類を知っていればいいわけではない!素早く的確に用途にあった結びを行う。
3回折り返して最後に解けないように輪っかにして締める。これで完成!
結び目は重ならないようにきれいに整える。
そして最後にトイレ用スコップともなるチタンペグのモグ
穴が一個空いているのみ。ペグを当てて地面に押し込む。幅広でペグ効きが良い分重たい。
ロープの縛り方は限られる。
穴のアップ
直径は約5mm。重さは実測で23g。重たいがペグ効きが良くてスコップにもなる代物。催してきた時に小さなペグでチマチマ掘っていたら間に合わない。
これもオススメ。1本持っておいて損はない。ただし、チタンピンペグ同様、そこら辺に落とすと見失いやすいので、気をつける必要がある。
頭をペイントマーカーの目立つ色で塗っておいた方が良いかもしれない。
まずは穴に通してテンションをかける。
そして同じように3回折り返して、最後に輪っかに通して締めた。
結び目のアップ。
うむ~。これでも悪くはないのだが、風が強いと外れるおそれがある。
そこで違う結び方をする。
ロープを穴に2回通して一周させる。
一周させたところ。キチンと引っ張ってテンションをかける。
そして輪っかを作って中に入れる。
引いて締めると完成!
結び目のアップ。
これで十分良いのだが、少し心もとない気がする。
そこでもう一度輪っかを作り締める。
二度締めることにより、さらに解けにくくなる。それほど時間がかからないので、なんでもツーハーフヒッチで縛っておくと良い。
風が強い時はロープを穴に3回通して2週させ、さらに2度輪っかを作り締めておく。
これなら多少風で煽られても緩むことはない。万全の態勢だ!
ロープワークまとめ
張り綱の自在を外してペグに直接縛ってみると、面倒くさいようで意外に楽なことに気がつく。度々張り綱の調整をしなければならないくらいなら、キッチリと締めておいたほうがいい。
穴にロープを通すのでペグからロープが外れることはなく、ペグが抜けてもどこかに飛ばされるおそれもない。ロープを扱う時に自在が引っかかることもなく、快適にロープワークを行うことができる。私は自在を使わないようになってずいぶん経つが、自在が欲しいと思うことは一度もない。
テンションの調整もしやすく折り返しの数で結びの強さを調整することもできる。
一度試しにぜひやってみて欲しい。おっさんの一押しのロープワークだ!
名前は知らんけど。
雪上キャンプではテント本体側に自在を付けておくと楽に設営・調節をできます。