残雪期のSierraは渡渉が一番危険!! PCTスルーハイクは狂気じみている。

アメリカ西海岸、MexicoからCanadaまで延びる全長約2600mileのトレイル、それがPCTだ。このPCTを1シーズンで全行程を踏破することをスルーハイクという。以前は、一部の超人しかなし得なかったスルーハイクも、軽量コンパクトなギヤ、整備されたトレイル、ハイカーたちへの支援のお陰で、一般人でも可能となった。

ただそれでも、スルーハイクはかなり無理がある。California南部の乾燥地帯を抜けたハイカーたちに待ち受けているのは、アメリカ本土最高峰Mt.Whiteny(約4,400m)を擁するシエラネバダ山脈(Sierra Nevada、High Sierraとも言う)だ。3,000m級の険しいい山々が連なる高山帯で、標高が高いため雪解けがかなり遅い。Sierraの登山適期は、雪解けが終わる7月下旬から降雪までの9月半ばころまでとされている。それなら雪解けに合わせて、Sierraに入るのは7月半ば過ぎでいいのではないか?

いやいや、そう簡単にはいかない。標高が2,000m級とSierraには及ばないが、Washington北部ともなると、高緯度のため9月末になると降雪のおそれがある。10月に入れば、いつトレイルが雪に閉ざされてもおかしくない。例年、Washington北部で降雪に見舞われて遭難騒ぎを起こすハイカーが後を絶たない。

Washington北部で雪に降られる前にゴールのCanadaまで行こうとすると、Sierraにはまだ雪解けが終わっていない6月中に入らなければならない。だが、残雪の多いSierraを歩くのは非常に危険な行為だ。

雪の急斜面の登下降、道迷い、緩んだ雪で体力消耗、増水したCreekの渡渉などが挙げられる。この中で一番問題になるのが渡渉。雪解け水で増水したCreekは刻一刻と状況が変わり、昨日通れたから今日通れるという保証は全くない。安全に渡れるスノーブリッジが消失してしまうかもしれないし、気温が急上昇して一気に水嵩が増してしまうかもしれない。Sierraの残雪時期は渡渉が危険なため、地元のハイカーでさえ滅多に歩かない。この時期に歩いているのは、気が触れたとしか思えないPCTのスルーハイカーたちだけだ。稀に見かける週末ハイカーは、危険なCreekを避けて無難なルートを歩いていた。

スポンサーリンク

渡渉時の詳細レポート

今回、私はSierraの南の玄関口のKennedy Meadowsを6月2日に出発した。

Kennedy Meadows出発の適期は6月10日ころとされているが、私は8日前に出発してしまっている。この時、私はSierraの怖さを全く知らなかった。2017年は雪が多いと小耳に挟んだことはあるが、たいして気にも留めていなかった。

まあ、なんとかなるだろう。ここまで700mileを歩き、妙な自信が付いていた。この妙な自信も渡渉失敗の一因となったように思う。疲労が蓄積していたのに、Kennedy Meadowsで1晩泊まっただけで、先に進む決断をしてしまう。他には焦りがあった。絶対にスルーハイクを達成したいという気持ちがあった。このこだわりが一番良くなかった。

South Fork Kern Riverの橋(6月2日14時30分ころ)

Kennedy Meadowsを過ぎたところ707mile地点South Fork Kern Riverに架かる橋。

増水して水が茶色に濁っている。橋が架かっていたから渡れたものの、歩いて渡渉はできなかっただろう。なぜこれを見てSierraの危険を察知しなかったのだろう。今になって分かるが、これは明らかに経験不足だ。

South Fork Kern Riverの橋の手前(6月3日7時30分ころ)

見渡すかぎり雪はなく平原が広がっていた。前日Kennedy Meadows過ぎで見た増水したSouth Fork Kern Riverのことはすっかり忘れた。増水して水が濁り不穏な気配が漂っていた。(前日と同じ川だと思わなかった。)Kennedy Meadowsに入る前日に雨が降ったから、降雨の影響だろうと安易に判断して不安を打ち消した。この頃には、すでに五感が敏感になっていたため、無意識のうちに不安を感じていたように思う。

South Fork Kern River(716mile地点)に架かる橋(6月3日7時35分ころ)

橋の上から見た感じでは、水深は腰くらいまでありそうだった。若干濁った水がゆっくりと流れていた。これで増水した状態だとは気が付かなかった。

Mulkey Pass(745mile地点)からHorseshoe Meadowに下りたところ。

6月4日9時40分ころ

Kennedy Meadows(702.2mile)から直でIndependenceまで行こうと考えていたが、Mt.Whitenyの登頂を確実なものにしようと途中のLone Pineに下りることに決めた。

Horseshoe Meadow近くのキャンプ場は、ちょうどゲートオープンしたところで、ヒッチハイクはそれほど難しくないと考えた。

Horseshoe Meadow周辺のようす(6月4日16時20分ころ)

遠くに雪を被った真っ白の山が見えるくらいでのどかなものだった。

Cottonwood Pass(750.2mile地点)6月5日7時15分ころ

Lone Pineで補給を済ませてその日のうちにトレイルに復帰した。復帰翌日、Cottonwood Passに辿り着いたところ。北側斜面に多くの雪が残っていたが、峠周辺は雪解けが進み広範囲に地面が露出していた。

ここまでは全く不安はなかった。ところがCottonwood Passを過ぎると雪の状況が一変する。

Rock Creek(760mile地点)6月5日13時50分ころ

Cottonwood Passからは雪に埋まった樹林帯を進んだ。木々に視界が遮られて右往左往しながら進んでゆく。次第に高度を下げて地面の露出が多くなって、歩きやすくなったと喜んでいると目の前に増水したCreekが現れた。

Creekのすぐ手前で早くもキャンプしていたハイカーが2,3人いたが、そういうことだったのか!と増水したCreekを目の当たりにして納得した。

渡渉するハイカー 6月5日13時50分ころ

Creekの前で呆然と立ち尽くしていると、先着していたハイカーが意を決して渡渉を始めた。ちょうどいい機会だと思い、ハイカーが渡渉するようすを観察していた。渡りきったハイカーは歓喜の雄叫びを上げた。

私も同じ場所から渡れるんではないかと思いトライしてみる。ところが思ったより水の勢いが強く、真ん中の一番深い場所まで行けそうにない。無理をせず引き返すことにした。

渡渉場所を探して上流に向かって川沿いを歩いた。すると100m上流くらいに中洲があって流木が引っかかっているのを見つけた。流木を伝って中洲に上がり、そこからCreekを渡れば水量も減って渡りやすいと思った。実際にやってみると私の予想は的中し、中洲で分断されたCreekは水量が減って渡りやすかった。上流側から流木に沿って歩くと、流木の足がかりとなって歩きやすかった。

初めての渡渉はこうして無事に突破することができた。私が他のハイカーの渡渉のようすを見ることができたのは、この1回きり。あとは自分で考えるしかなかった。

渡渉ポイント下流の小滝 6月5日14時05分ころ

先ほど先行するハイカーが渡った場所の300mほど下流には小滝があった。
近くでみると轟音も聞こえてきて、滝まで流されたら助かりそうにないことが分かった。
渡渉に失敗して流されたら、すぐに岸に辿り着かないと一巻の終わりとなる。

水量の多いCreekには、必ずこういった地図にはない小滝がある。普段はちょっとした段差だが、水量が増えると滝になる。

雪原をゆく 6月5日16時30分ころ

だだっ広い雪原を進む。雪が緩んできたため、体力をかなり消耗する。地図をみて現在位置を確認しないと、自分がどこにいるのかすぐに分からなくなる。

Crabtree Meadow手前 6月5日17時40分ころ

雪の斜面を慎重に下っているところ。樹林帯に入ると視界が悪くなるため、見通しの良いところで周辺の山を観察しておく。

Crabtree Meadow(766mile地点) 6月5日17時50分ころ

Crabtree Meadowまで下りてくると、目の前に幅の広いCrabtree Creekが横たわっていた。水深が深く泳がないと渡れそうにない。間もなく日没で気温が下がってきているので、渡渉するなら早めにしておきたい。

川に沿って下流に向かって歩いた。

Crabtree Creekの渡渉 6月5日18時00分ころ

しばらくゆくと川幅が狭くなったところに倒木が引っかかっているのを見つけた。
写真は渡ったあとで撮影した。

渡り始めは川底を歩き、流れが強くなる手前で倒木に乗り、滑らないように枝を持って慎重に歩いた。

渡り終えるとホッと胸を撫で下ろす。下流には大きな滝があって、ここからでも滝の音がハッキリと聞こえてきた。失敗して流されたら終わり。一日の終わりころで、体力を消耗しきっていたため、岸まで泳いで辿り着ける自信は全くなかった。

そんな状況でも、渡渉を終えてからどこかでツエルトを張って休みたかった。朝一の渡渉は多少水量が減って渡りやすくなるが、渡れるかどうか不安な夜を過ごさねばならないし、水が非常に冷たい。私は渡渉を翌日に持ち越すのが嫌いだった。

Whitney Creek 6月5日18時05分ころ

Crabtree Creekを渡ってホッとしたいたのはつかの間、次なるWhitney Creekが現れた。
Mt.Whitneyに登るためには、このCreekをしばらく遡ってから渡渉しなければならない。まだ渡渉ポイントは先だが、渡れるようであれば渡っておきたかった。

Creekを遡っていくが、どこにも渡れそうな場所はない。下流のCrabtree Creekとの合流地点は流れが遅かったが、水深が深く泳いで突破しなければならなかった。すでに暗くなりかけて気温が急降下しているため、泳ぐのは危険だった。無事にたどり着いても濡れた体を温めるには時間がかかる。焚き火しようにも地面が露出しているところは少なく薪になりそうな木は見当たらなかった。

Mt.Whitneyを望む 6月5日19時15分ころ

結局この日、Whitney Creekを渡るのは断念し、Creek脇でツエルトを張り翌朝水量が減ることを願ってCreekの轟音を聴きながら眠った。Mt.Whitneyには登りたい!しかし、無事渡渉をして戻ってこれるのか。渡渉で足止めを食らうと次のIndependenceに辿り着く前に食料が尽きるかもしれない。疲れていて眠りたかったが、寒さと不安のためほとんど眠ることができなかった。

Whitney Creekのようす 6月6日5時10分ころ

朝起きるとすぐにCreekの水量を確認してみる。すると思ったほど水量は減っておらず、渡渉できるとは思えなかった。朝一でこの状態だと、Mt.Whitneyに登って下りてきた時、戻ってこれなくなるおそれがある。

実は無理にここで渡渉しなくても、Creekを遡ってゆき水量が減ってから必要となった時に渡渉を行えば良かったのだが、当時の私は何が何でも渡渉しようとしていた。Creekの対岸にMt.Whitneyを登ってきたと思われる大パーティを見たことで勘違いしてしまった。寒さと疲れで思考力が低下していたことが思い込み、勘違いをより加速させた。

Mt.Whitneyのようす 6月6日5時30分ころ

Mt.Whitneyの登山を中止する口実を探していたのかもしれない。雪解け水で増水したWhitney Creekを見てすぐにMt.Whitney中止を決断した。当時の私は寒さと慢性疲労で、体がボロボロだった。渡渉以前に食料が尽きるかもしれなかったし、力尽きて動けなくなる恐れがあった。Mt.Whitney中止は考えるまでもないことだった。

画像をMt.Whitneyとしているが、確信は持てない。地図で確認した方向を見ると、風格のあるひときわ高い山が見えたので、Mt.Whitneyと思うことにした。

Wallace Creek(770.3mile地点) 6月6日8時35分ころ

朝食を終えて体が温まったころに、Creekが現れた。Rock Creek同様に厳しい渡渉となった。渡渉ポイントを探してウロウロしてみたが、ここは安全とハッキリと分かるようなところはなし。できるだけ水の流れが遅い幅の広いところを渡った。水深は膝上程度、上から見たようすだとそれほど深いようには感じなかったが、実際にCreekに入ってみると意外に深かった。水流が早いし、水の屈折があって見ただけでは非常に分かりにくい。

川底のようすを靴底で感じながら、ゆっくり渡っていった。自作の杖2本を手に持っていたが、トレッキングポールに比べて径が太く水の抵抗を受けやすく流されないように突くのが大変だった。しかし、体のバランスを取るのには重宝した。何度か体が浮きそうになってヒヤヒヤしたが、なんとか渡りきることができた。

Wallace Creek渡渉ポイントのすぐ下流にあった滝 6月6日9時00分ころ

対岸にたどり着いて岸に上がると、どっと疲れが出た。
雪にほとんど埋もれた標識を見落とし他のトレイルの方に下っていってしまう。
写真はWallace Creek渡渉ポイントのすぐ下流にあった滝を写す。轟音が聞こえてきたため行ってみると、かなりの落差のある滝となっていた。渡渉に失敗したら、すぐに滝まで流される。滝まで流されたら、どうみても助かりそうにない。つまり渡渉の失敗は死を意味する。

6月6日9時20分ころ

渡渉したあとHigh Sierra Trailに下りて行き、流れにトレイルを阻まれて、ようやく間違いに気がつく。どうやっても突破できそうになかった。ここをどうやって迂回しようかと地図を見た時に気がついた。ここが通れなくなっていなかったら、相当下まで下って行ってしまったに違いない。他のハイカーの踏み跡に釣られてしまった。

Wright Creek(771.0mile地点) 6月6日10時45分

道間違いで随分とタイムロスをする。Wallace Creekに続いてWright Creekの渡渉。
踏み跡を辿ってスノーブリッジを見つけたのだが、どうも危険な感じがする。水流に削られて薄っぺらになっている。先行のハイカーは大丈夫でも、私が渡ったら崩れるかもしれない。

水量が多く、水の中を歩いて渡れそうな気は全くしない。

倒木の丸木橋発見! 6月6日10時45分

あちこち動き回って周囲を観察すると倒木がうまいこと倒れて引っかかっている丸太橋を発見した。一見して丈夫そうで安全に渡れる気がする。ただ、丸太との段差がかなりあるので、注意が必要だった。誤ってCreekに落ちないように慎重に上り降りした。日が照ってきて暖かくなってきていたので、丸太凍結の心配は全くなかった。

朝一で渡る場合は水しぶきで濡れた丸太が凍っていることがあるので注意が必要だ。実際、朝一にろくに確かめもせず安易に渡ろうとして滑って転びそうになったことがある。渡渉に慣れた時が一番危険。常に緊張感を持って望みたい。

Tyndall Creek手前 6月6日15時40分ころ

この日は道間違いを散々やらかして大幅なタイムロスをした。Wright Creekを渡ったあと、間違えてWright Creekの上流の方に向かって歩いてしまった。手持ちの地図のちょうどページを跨ぐところで、地図が読みづらかった。タイムロスをすると焦りが出てきて余計に失敗をしやすくなる。こういう時こそ、冷静になってマイペースで歩いてゆく必要がある。挽回しようと頑張って歩くと無駄に体力を消耗してしまう。キャンプサイトを探すのにも体力を必要とするので、ある程度余裕を持っていなければならない。

Tyndall Creek(774.7mile地点) 6月6日15時45分ころ

水量は少なくて渡渉の危険はなかったが、段差があるため上り降りできる場所を探さなければならなかった。上流に向かって歩いていると、手がかりになりそうな木があって、川岸の地面が露出しているところを見つけた。渡渉は簡単だった。

渡渉を終えるとすでにいい時間となっていて、左前方にキャンプに良さそうな樹林帯があった。そこなら風が吹いても大丈夫だろうと思った。岸に上がった時に水を汲んで浄水しておけば良かったのだが、そのままキャンプサイトを探しに行ってしまったため、水を汲みに戻って来なければならず、余計な体力を消耗した。

できるだけ安全に渡渉をするためには、体力と時間と食料の余裕が必要だ。

6月7日8時35分ころ

Forester Passを越えてBubbs Creek沿いに下っているところ。
日が昇って気温が上昇してきている。雪が緩み始める前に距離を稼いでおきたい。
目の前に危なそうなスノーブリッジが現れたが、時間が勿体ないからと迂回せずにそのまま渡った。細い場所に足を載せないように大きく跨いだ。バランスを崩したら危ないが、時間がないため、安全重視ばかりではいられなかった。

前日、8mileほどしか歩けず焦っていたこともある。慎重過ぎでも、大胆過ぎても良くない。幾つもの渡渉を繰り返し行うため、いちいち時間をかけていられなかった。微妙なさじ加減は自分の五感に頼る。

Woods Creekに架かるsuspension bridge(吊橋)799.8mile地点 6月11日9時40分ころ

橋を渡る前に日向で朝食を食べた。South Fork Creek沿いは雪に埋もれていてハードだった。吊橋の存在をすっかり忘れていて、途中で倒木の丸太橋を渡り対岸に渡りそうになる。ところが、そこで渡ってしまうと、渡渉不可能な急流に阻まれて引き返すことになる。

suspension bridgeやfoot bridgeが設置されているところは、水量が多くて幅が広い渡渉が困難なCreekとなっている。残雪時、橋が架かっているCreekの渡渉はまず不可能と考えておいたほうがいい。

Woods Creekのようす

凄い水流で人力のみでは渡れる気配は全くない。

角度を変えてもう一枚。流されたら一巻の終わりだ。橋を渡る以外に方法はない。

壊れたベアキャニスター(BV-500) 7月20日18時35分ころ

ちなみにCreekに流されるとどうなるのか?

このベアキャニスターはEcho Lake手前(1100mile付近)の小さなCreekに落ちていたものだ。私が通過した時は、ちいさな流れだったが、雪解け時は増水してベアキャニスターを破壊するほどの水流となると思われる。

パックリと割れているベアキャニスター。クマも破壊出来ないものを水は破壊してしまう。ハイカーは無事だったのだろうか?ベアキャニスターを流されると、食料も奪われることになる。ベアキャニスターは必ずバックパックの中に入れておいた方がよい。

South Fork Kings River(811.4mile地点) 6月12日06時05分ころ

時々渡渉が難しくなると言われるSouth Fork Kings River。前日はSouth Fork Kings River手前、雪上を避けてLake Marjorie付近の小高い丘の上でツエルトを張った。

渡渉ポイントに向かって下りてゆくと、日の当たりにくい谷底で非常に寒かった。
渡渉は3回で、まず1つ目の流れが現れた。まだ早い季節のため、丈夫なスノーブリッジがあちこち架かっていて、難なく通過することができた。

South Fork Kings River 3回目の渡渉ポイント  6月12日06時20分ころ

始めの2回はスノーブリッジがあって楽に渡ることができたが、3回目は本流で厳しい渡渉となった。朝一の状態でこの水量。あちこちウロウロしてみたが、ハッキリと安全に渡れそうな場所は見当たらず。時間が経てば経つほど水量が増してくるので、迷っている暇はなかった。

先行者の足跡を参考にできるだけ浅そうな場所を見つけて渡った。川幅がかなり広いため、岩や流木の影で休みながら、少しずつ渡っていった。水はしびれるほど冷たかった。

昨日のキャンプ地がベストだったと、朝一の渡渉をしてから感じた。

Evolution Creek渡渉ポイント手前 6月14日06時30分ころ

Creek沿いを歩きながら渡れるところがあるといいなと考えていた。

Evolution Creek周辺地図(National Geographic JMT Topographic Map Guideより)

Ford creek in Evolution Meadow during peroids  periods of high run-off.
水量の多い期間はEvolution Meadowで渡りなさい。
Bishopで手に入れたJMTの地図には、水量の多い時期には手前の湿地帯で渡渉するようにと注意書きがされていた。さらにその先、South Fork Creekに架かるFoot Bridgeが記載されていたため、渡渉後はそのままEvolution Creekの左岸(下流に向かって左)を歩いて行けばよいと分かった。
 
 
Evolution Creek can be a difficult ford. It may be easier to cross in the meadow at TR0850.
地図上の目立つところに、Alternate route(迂回路)の表示あり。
この迂回路を知らないと、Creekの手前で右往左往して大幅なタイムロスをしてしまう。焦って無謀な渡渉をしようとするかもしれない。そのため事前のルートの情報収集は、非常に重要となる。

Evolution Creek Evolution Meadowの渡渉ポイント付近 850.9mile地点
6月14日06時45分ころ

Evolution Creekは水量が多い時期は、迂回路のEvolution Meadowで渡渉することになる。湿地帯で川幅が一気に広がり流れが緩やかになっている。あちこち歩きまわって一番浅そうなところで渡渉を開始した。水深は最大で股下だった。あそこが水に触れると冷たさのあまり飛び上がりそうになった。流れは緩やかだが、水圧はかなりのもので、流れに逆らわないように斜め下流方向に歩いて渡った。この渡渉ポイントも水量が増えて水深が深くなってくると安全とは言えなくなるだろう。

渡渉を終えて水から上がったところ。この日の渡渉も早すぎず、遅すぎない絶妙の時間帯だった。この時裾を絞ったロングパンツを履いていたが、水捌けが悪くて渡渉の妨げになっていた。渡渉する時だけでも裾を捲った方がいいとあとで思った。

Evolution Ceek

If the water level is high, this crossing is hazardous.
Alternative crossing:Follow creek upstrem and cross at Evolution Meadow.

水深が深い時、ここでの渡渉は危険です。
渡渉の迂回路:流れを遡ってEvolution Meadowで渡渉しなさい。

 
渡渉後、迂回路分岐点にあった注意看板。渡渉前は雪でトレイルを辿れなかったこともあって、注意看板は見ていない。
 
 
湿地帯を過ぎると、Creekの流れは再び勢いを強める。
 
 
そして滝が現れた。滝まで流されたら絶対に助からない。
 
 
Piute Creek Foot Bridge(856mile地点)6月14日10時00分ころ
 
この付近になると雪はほとんど消えて歩きやすくなった。しかし、Creekの水は多くて危険な状態となっている。
 
 
PCTA Pacific Crest Trail Water reportには、先のBear Creek(869.2mile)は渡渉困難という情報と迂回路が掲載されていた。10日前の情報だったが、水量が減って渡れる保証は全くないので、無難に推奨の迂回路をゆくことにした。
 
写真はFlorence Lake手前の渡渉ポイント。樹林帯のトレイルを歩いていたら、唐突現れた。行くか行くまいか迷って周囲を探索してみたが、他に行けそうな場所はなかったので、渡渉することに決めた。この下流は湖に繋がっていて途中に滝がなかったため、万が一流されても大丈夫たと判断した。
それでも水深が測れないのは気持ち悪くて、徐々に深くなってゆくのは心細かった。最深部は腰上の高さでバックパックの底が水に濡れた。
 
 
Florence Lake湖畔の道を歩く。迂回路の道順が分かったのは、オフラインでも使えるスマホアプリ「Guthook’sPCT」のお陰。圏内で一度表示させておくと、圏外でも表示できるようになる。私はトレイルの地図しか持たなかったため、山火事や渡渉の迂回で非常に役立った。
 
PCTA Pacific Crest Trail Water report Snow & Ford Reportの情報

Water reportには、水場情報の他に、峠の雪と渡渉の情報や山火事迂回の情報も掲載されている。PCTをスルーハイクする際は、PCTA Pacific Crest Trail Water reportに定期的にアクセスして最新の情報を手に入れておく必要あり。

英会話がほとんどできない私は、Water reportを穴が空くほど読み返して理解するように努めた。
推奨の迂回路情報のように、私はMuir Trail RanchからFlorence Lakeに出て道路歩きをしてThomas Edison Lake湖畔のVermilion Valley Resortに寄り食料の補給をして、VVRからGoodale Passを越えてPCTに復帰した。
 
JMT Map7ページ 
N Fork Mono Creek(879.4mile地点)の渡渉ポイント
 
非常に滑りやすいとの注意書きあり。水の流れで岩肌が削られてツルツルになっているそうな。ただでさえ水量が多くて滑りやすいため、渡渉には厳重な注意を要する。この件は、Independenceのホステルで会ったフレンドリーなハイカーに教えて貰った。そのハイカーは前年の2016年9月末ころ、JMTをセクションハイクしていた。ここはBear Creekの先で迂回している。
 
 
Goodale Pass手前のCold Creek 6月16日05時20分
 
うまい具合に倒れていた倒木が見付かってイージーに渡ることができた。これは非常にラッキーだった。渡渉は水に浸からずに渡るのが一番安全。倒れて間もない木のようで、あちこち枝が残っていたため、持つところがあって歩きやすかった。
 
枝のない丸坊主の丸太は、凍結していないか特にしっかり確かめて渡る必要がある。ぱっと見は大丈夫でも、薄氷が付いていることもある。安易に一歩を踏み出すと、ツルンと滑って冷たいCreekに落ちることになる。
 
 
Fish Creekに架かる橋の前で記念撮影 6月16日13時40分ころ
 
 私のTrail Name「Tokyo Joe」の名付け親、Crushとここで再びあった。私は迂回路を通るために、前日VVRでは泊まらずに山中で泊まったのだった。CrushはVVRで泊まり、迂回せずにN Fork Mono Creekを突破してやって来た。先行していたのに、もう追いつかれてしまった。
 Crushは若者だが、センス、テクニック、体力を兼ね備えたナイスなハイカーだった。この後、彼と会ったのは、渡渉を失敗してスキップして南に向いて歩いていたHat Creek Rim手前(1398mile地点)だった。彼のスピードだと遅くても8月中にはゴールのCanadaまでたどり着いていたはずだ。彼は今頃どうしているかな?
 
Fish Creekの激流
 
ジェットエンジンのような轟音がしている。こんなCreekのそばだと煩くて眠れそうにない。
 
 
Purple Creek(893mile地点)6月16日17時55分ころ
 
この日は樹林帯の斜面で滑落するなど、慢性疲労が出てきてどうにも体が動かなかった。気温が高くなって雪が緩み過ぎたのも大きかった。遅れを取り戻そうと頑張って歩いていると、Purple Lake出口のPurple Creekまでやって来た。
Creekには、ちょうど2本倒木があったが、一本は少し細くて頼りなさそう。そしてもう一本は写真のもの。太いが水に大部分が浸かっている。渡渉を明日に延ばすと、表面が凍結して朝一の渡渉は危険がともなう。かと言って上を歩いてゆくには、滑りそうで自信がない。
少し前に斜面で滑落していたので、ここは馬乗りになって慎重にゆくことにした。
不細工な方法で下半身を水に濡らしながらも、なんとか渡ることが出来た。ところどころ出ていた枝に助けられた。丸坊主の丸太だったら難易度が上がったことだろう。
 
 
渡渉後、Creekすぐ脇でキャンプすることにした。体が濡れて非常に寒かったので、火を起こして焚き火をした。ここだけ広範囲に地面が露出していて乾燥した薪がたくさん落ちていた。
焚き火をすると暖かいほかに精神安定剤ともなる。炎を見ていると心が落ち着く。弱気になった時は焚き火をするに限る。(ただし、水場の近くで行う。)
 
 
Reds Meadow手前 6月17日13時45分ころ
 
緩んだ雪の区間を抜けてようやく雪のないところに辿り付いた。Reds Meadow周辺は雪解けし終わったころで、痛々しい山火事の跡が見られた。
 

渡渉失敗を振り返る

 
 
Minaret Creek手前の名も無きCreek 6月20日14時20分ころ
 
Mammoth Lakesのキャンプ場で2泊してからトレイルに復帰した。Reds Meadowのリゾートは、いつになったら営業を開始するのかさっぱり分からないままだった。下界とReds Meadowを繋ぐバスもアクセス道路が雪に埋もれている状態で運行開始は未定のままだった。
 
この日、朝早くキャンプ場を出発し、Twin Lakeまでヒッチハイクして、Mammoth Passを越えてPCTに復帰したのだった。Reds Meadowの少し先からPCTとJMTのルートが別れており、私は何の考えもなく景色の良さそうなJMTを選択した。これも間違いのもとだった!
今、冷静になって地図を見ると、山の中腹を通るPCTを選択しなかったのが不思議でならない。あとになれば、何とでも言える。ハイキング当時の私には全く余裕がなかった。
 
 
Minaret Creek(909mile地点)JMTルート 6月20日 14時55分ころ 
 
この日の焦りはいつになく凄かった。Mammoth Passを越えるのに時間がかかり、ヘトヘトになってしまっていた。長期間蓄積された慢性疲労がキャンプ場に2泊しただけで疲れがとれる訳がない。これまでの疲れを引きずりながらMinaret Creekに辿り着いた。
 
一見すると無理をすればギリギリ渡れそうな気がする。そこで足を2,3歩踏み入れてみる。見た目以上に流れが早く流されそうになる。ここでは危険と判断し外でも試してみるが、ダメだった。再度ここに戻ってきて渡渉に挑戦してみる。
 
ちょうど流れの強いところに流木が引っかかっていて、これらを利用すれば渡れそうな気がした。今思うとなんて浅はかな考えだろうと思う。当時の私を思いっきり引っ叩いてやりたくなる。今地図を見ると、少し上流のJonston Lake付近が平らで、ここらへんなら流れが穏やかで渡れそうな気がする。なぜHalfmileを遡るのを嫌がったのだろうか。地図を確認しながら進むので、全然距離を稼げないし、雪が緩んでいて体力を消耗するためだ。
 
 
この先、次の補給ポイントとなるTuolmne Meadowsのお店も、道路が冬期閉鎖のままで営業開始の目処が全く立っていない状態だった。補給なしに先へ進もうとすると、たくさんの食料を背負わねばならず、消耗しきった状態ではとても歩ける自信はなかった。
そこでHighway120を東に20mile歩いてLee Viningの町で補給し戻ってくるつもりだった。
(2017年、Tuolmne Meadowsのお店の営業開始はなんと7月28日だった。)
 
 焦って無謀な渡渉をした結果、流されそうになり死にかけた。画面中央の流木の山の先に進もうとしたら、流されそうになって態勢が崩れた。なんとか岸にたどり着くことができたが、一歩間違えばあの世行きだった。下流には滝が待ち受けていて、絶対に流されてはダメな状況だった。
 
Mammoth Lakesの町からトレイルに復帰すると、PCTのAlternate RouteとなるJMTを歩くことにしました。JMT区間に入って直ぐ増水したCreekが現れました。何を焦っていたのか、Creekを強引に突破しようとしてしまいます。
 
 

JMT Map5ページ
事故現場のようす
 
JMT Map(2014年発行)によると、Minaret CreekにはFootbridgeがあるはずだが、どこにも見当たらなかった。Halfmileの地図にもdouble log bridgeという記載がある。橋が流されるくらいの勢いなのだから、迂回路を探せばいいものだが、疲れていた私にはそんな余裕はなかった。余裕がないのなら引き返すしかない。スルーハイクにこだわり過ぎていた。
 
 
ズタボロになったズボンとTシャツのまま記念撮影 
Reds Meadows付近にて 6月20日16時15分
 
渡渉失敗により流されたもの
自作杖2本、ペットボトル2本、浄水器1個、軍手1組、慢心
 
渡渉失敗した地点が、登山口からすぐのところだったため、すぐに引き返すことができた。
眼鏡が流されなくて本当に良かった。私の視力は0.1以下で、眼鏡なしでは戻れていたかどうか分からない。流されそうになって流木にしがみついている時、水圧が凄くて態勢を立て直すのは非常に難しかった。とっさの閃きで水の抵抗が減るようにと、体を流して手で流木を掴んだのは良かった。まだ日が高くて水温も低くなかったため、体がそれなりに動いてくれた。バックパックを投棄しようか迷ったが、結果的には死守してよかった。バックパックは水に濡れてきて徐々に重たくなってきていた。
 
水の中から体を引き上げるのには苦労した。流木の山まで横移動して水を切りながら少しずつ体を引き上げていった。バックパックを背負った状態だったので、体の自由がききにくかった。岸に上がるとようやく生きた心地がした。
 
 
当時の写真とは異なるが、渡渉した際、スマホはジップロックに入れてベアキャニスターの中に入れていた。サコッシュ(財布とジップロックに入れたパスポートあり)は邪魔なのでバックパックの中に入れていた。Sierraで必須のベアキャニスターは簡易の防水ケースにもなる。
 
バックパックを流してスマホ・財布・パスポートを3つ同時に失えば、言葉が通じないアメリカでは生きていけないと思った。Tシャツ、長ズボンと軽装だったため、体1つで町まで下山するのは、できないことはないが、かなりのところまで追い詰められることだろう。限界寸前まではバックパックを死守しようと頑張った。私の使っていた自作レイジャーディンバックパックは、ウエストストラップがなくて肩だけで背負った状態のため、投棄することは比較的簡単だった。
 

Minaret Creek その後のようす

 
 
穏やかなMinaret Creek 7月30日14時35分ころ
 
渡渉失敗した私は一筆書きのスルーハイクは断念し、一旦SierraをスキップしてOregonのAshlandからMammoth Lakesまで南向きで歩くことにした。ハイキングを強行したら今度こそ死ぬと思った。実際、雪解けがおおかた終わった7月下旬に歩いてみると、増水したら危険と思われるCreekが何本も横たわっていた。私と同時期にSierraを歩いていたハイカーによれば、Tuolumne River周辺、と他の場所で決死の覚悟で泳がねばならなかったという。
 
写真はJMTハイカーが渡渉しているところ。私が失敗した場所はこのすぐ下流側だった。
 
 
渡渉失敗現場
 
見た瞬間、ここだとすぐに分かった。あれから40日経ち、すっかり穏やかなCreekとなっているが、当時の面影は残っていた。ここで死にかけたのが信じられないほどだった。
 
 
当時の写真
 
2つの写真を見比べてみると、水量と水勢、水の色が違うことがはっきりと分かる。
 
 
流木の上を歩いて渡ってみた。どっしりと安定していて危ないことはない。
 
 
流されそうになった時、画面中央の斜めに一本引っかかっている木にしがみついたような気がする。この木がなければ、私は流されていた。
 
 
流木の上から上流方向を写す。本当に穏やかなMinaret Creek。雪解け時はどこのCreekも増水して危険な状態となる。こんな時期にハイキングするとは、スルーハイクは正気の沙汰ではない。何度でも言おうスルーハイクはCrazyだ!
 
 
雪の急斜面での登下降、緩んだ雪原歩き、Creekの渡渉で威力を発揮した自作の杖。
Kennedy Meadowsに入る前、森のなかで枝を拾って作った。
細い枝だと力がかかると直ぐに折れてしまう。かと言って太くすると重たくなるし、渡渉の際に水の抵抗を受けて流されそうになる。自作杖の場合はトレッキングポールのようにストラップがないため、手を離したら流されてしまう。うっかり手を離してしまわないように気をつける必要がある。
 
今回、PCTを歩いてトレッキングポールの必要性を痛感した。急斜面ではピッケルと前爪付きのアイゼンがあったほうがいい。重たくなるが、スピーディーに歩ける。次回PCTを歩くなら、丈夫なトレッキングポール、軽アイゼン、前爪付きアイゼン、ピッケルの用意は必ずしてゆくつもりだ。
 

安全な渡渉のために

 

体を水に浸けない方法が一番安全で楽。

近くに渡れそうな倒木、スノーブリッジを探してみる。遅い時期だとスノーブリッジは崩壊の危険があるので、慎重に見極める。太い倒木は比較的安全だが、枝のない丸坊主の丸太だと持つ場所がないのでバランスを崩して転落しないように注意が必要。水に濡れて滑りやすくなっていたり、表面が凍結していることもある。朝一に倒木の丸太橋を渡る時は特に注意する。
 

水深が浅く流れが穏やかなところを選んで渡る。

 川幅が広いところは流れが穏やかで、狭いところは急になる。Medowと名前が付く湿地帯周辺は平らで流れが穏やかになる。できるだけ浅く穏やかなところを探す。
中洲があるところだと、流れが分断されて水量が減るため渡りやすい。中洲伝いに行けるルートがないかチェックしてみる。
 

朝一の渡渉は水量が減る

日中は体感的には30度を越える暑さのSierraだが、夜になると気温は急降下し氷点下まで下がる。夜間から早朝にかけて雪解けが緩やかになりCreekの水量は減る。ただし、期待しすぎるとガッカリする。Whitney Creekのそばでキャンプをした時、前日と朝の水量を比べてみると若干減ったような気がしただけだった。早朝のCreekの水は非常に冷たい。体が温まる前に行うと非常に堪える。

早い時間で渡渉を諦めキャンプすると大幅なタイムロスとなる。キャンプをする前に渡渉ポイントをあちこち探し回った方がいい。待っている間にも貴重な食料が減ってゆく。

 

橋は必ず渡る

Sierra山中では、水量の多いCreekには橋が架かっている。橋がないと渡れないためである。特にsuspension bridge(吊橋)は幅の広いCreekに架かっている。橋は必ず通らねばならないチェックポイントだと思っておいた方がいい。地図上ではショートカットして渡渉できそうところでも、実際に現地に行ってみると激流だったりする。

歩き回って探すのを厭わない

疲れるのを嫌って適当な場所で渡渉を行うと、私のように危険な目に遭う。自分が確信を持てる場所が見つかるまで探し回った方がいい。他のハイカーの話だと、渡渉ポイントを探すために1,2mileもCreekを遡ることもあるらしい。確実に渡れる場所が見つかる保証はないが、下流に向かうより上流に向かった方が水量が減って見つかる可能性が高くなる。上流、下流どちらに向かうかは現場の状況と地図を見て決める。

 

体が小さくて軽いほど不利になる。

体に加わる浮力は押しのけた水の体積分の重さとなる。足が浸かるくらいまではいいが、股下より上になると一気に浮力が増して流されそうになる。
渡渉する時、危ないからと言って誰かに荷物を持ってもらうのは良くない。重たい方が流されにくくなる。

 靴を履いたまま渡る

靴が濡れるからと言って、靴を脱いで裸足で渡るのは良くない。増水して濁った水の中は、どうなっているのか分からない。グリップが良くて川底の感触が分かりやすいかもしれないが、怪我する危険をともなう。トレランシューズはグリップも良く、水捌けが良く乾きやすいので軽量重視のスルーハイクには合っている。残雪期のSierraは靴を濡らさずに歩くのは不可能。濡れても歩いているうちに乾く。

 

事前の情報収集が非常に重要

Creekの状況は刻々と変わってゆくため、昨日通れたからと言って今日も通れる保証はない。ひょっとしたら情報提供者は身長180cm以上の大男かもしれない。

最新情報を入手して、先に進むか迂回路をとるかを決定する。一旦Sierraに入ると圏外でスマホは使えない。この時期、南向きのスルーハイカーが来るにはあまりにも早い。

町にいる間に、他のハイカーから意見を聞いたり、PCTAのWarter ReportやFacebookから情報を得て、最終的には自分で決める。

まとめ

今回、この記事を作成しようと思ったのは、PCTを歩いていてSierraでの渡渉が一番危険だと思ったからだった。事前に見聞きしていた情報とは随分と違っていた。

2017年は大雪の年で、ハードなSierraを多くのハイカーたちがスキップしていった。私もその一人だが、渡渉に失敗するまでスキップしようなどとは思わなかった。それは残雪期のSierraの危険性がよく分かっていなかったからだ。アメリカ人と日本人とでは感覚が少しズレているようにも感じた。ハイカーのバイブルとされるYOGI’S PCT HANDBOOKを読めばOKという訳じゃない。事前の情報収集が非常に重要だと思った。

英語が堪能で読み書き英会話がスラスラ出来ればいいだろうが、私はほとんど英会話ができない状態だった。しかも他のハイカーたちとコミュニケーションがとれず一人でいることが多かった。私に出来たことはPCTAが流す情報を繰り返し読んで理解することだけだった。

Sierraの奥地に分け入ってゆくと次第に余裕がなくなってくる。慢性疲労、残りの食料、峠の通過、Creekの渡渉と考えることがたくさんある。食料が尽きれば行動不能になるため、ゆっくり歩いている訳にはいかなくなる。追い詰められた異常な精神状態と疲労が溜まった体で行動してゆくと、普段の自分では考えられないような馬鹿なことをすることもある。

実際、私は南に向いて歩いている時に、逆方向に2mileも歩いてしまったこともある。それに増水して明らかに危険なCreekも渡ろうとしてしまった。こんな危険な目に遭うのはもう沢山だ。私だけでいい。たかがハイキングに命を賭けることはない。

この記事は現在の私が持っているもの全てをぶち込んで書き込んだ。今後PCTを歩く人の参考に少しでもなったら私は嬉しい。

おわり

スポンサーリンク
おすすめ記事
スポンサーリンク

コメント

  1. ymz2 より:

    同じ時期に付近のcreekで日本人女性が亡くなっていたんですね。
    http://blog.goo.ne.jp/gkazk/e/85bda92fd369d5654e721549f3a0bd26

    • karaage より:

      はい、そうです。
      冥福を祈ります。

      雪解け時のCreekは刻々と状況が変わるため、行ってみないと分からないことがあります。
      そして行ってみて確認すると危険だと分かっても、食料の残りが少ないと行くしかない時があります。
      食料をたくさん持てばいいんですけど、重たくて全然歩けなくなりますので、食料を豊富に持ってゆくことはできません。